「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

2:自己決定理論

{102}Immersyve Inc. (2007)

プレイヤーの欲求充足の知覚(The Player Experience of Need Satisfaction:PENS)の概論。 プレイヤーは"何故"楽しさを知覚するのかに焦点を当て、その理由をSDT[76]の概念を用いて言語化したもの。基本的に、楽しさの表れは心理的欲求の充足からなるものであ…

{100}Reinecke Leonard, et al. (2012)

心理的欲求の充足/阻害がゲームプレイの選択にどうかかわっているか、欲求阻害の回復行為が現れるかを実験で確かめたもの。 米国中西部の大学生111名(男性28名 平均19.96歳)対象。フライトシミュレーターを使用。あらゆる操作が求められる高条件・速度や舵の…

{98}Max Birk and Regan L. (2013)

コントローラの際によるプレイヤー体験の変動、またその要因を実験したもの。 プレイヤー体験はゲームプレイ中に表出された性格の変動の影響を大きく受ける。性格の変動はプレイ中の欲求充足により変わるため、例えば扱うコントローラによって、ゲームの合う…

{99}Christian Burgers, et al. (2015)

教育用ゲームの動機付けにフィードバックがどう絡んでいるのか、またその構成要素の詳細を実験で確かめたもの。 脳トレライクなゲームを用いる。2(フィードバックの正/負)×3(記述・比較・評価フィードバック)の6条件に割り振り。157名(女性109名 平均32.07歳…

{96}Daniel Johnson and John Gardner. (2010)

ゲームジャンルの選好・心理的欲求(PENS)・性格特性(big five)の関係を調査したもの。 235名(男性82%,平均22歳)対象、71%がビデオゲーム学科所属の学生。オンライン調査。サンプリングは雪だるま式。現在の好きなゲーム(シューティング・スポーツシミュレ…

{94}Froiland, J.M. and Worrell, F.C. (2016)

高校生における内発的動機付けと学業成績の関係を色んな変数加味したうえで調べてみた。 サンフランシスコ・ベイエリアの高校生n=1575(fe 53%)対象。調査。 変数。内発的動機付け、エンゲージメント、学習目標(熟達志向)、GPA2012,2010、性別、親の学歴、年…

{88}桜井 茂男, (1984)

CET(Deci 1975)で問われた報酬-欲求-充足-動機付けの関係を掘り下げたもの。 SEMモデル(Self-Evaluative-Motivatiom-Model)について記述。 自律性と有能感はそれぞれ独立した要因であり、報酬の構成要素によりどちらがどれぐらい充足されるかが異なる。 実験…

{87}草本 明子, 高橋 純, (2023)

PCを用いた協働学習が、生徒の心理的欲求の充足を介した動機付け向上につながるかを実験で確かめたもの。 授業構造としてはグループワークを基礎とする(関係性充足)。グループに課せられた課題の詳細を自由に決めてよいとした(自律性充足)。この時グループに…

{81}三和 秀平, 外山 美樹 (2021)

教員の動機付けと子供の動機付けの関連、および自律性支援の媒介効果を検討する。 結果として、教科指導学習動機(三和・外山 2015)のうちの子ども志向は、教師が認知する自律性支援と正の相関を示し、子の認知する自律性支援を媒介してこの内的調整に正の相…

{79}岡田 涼 (2009)

OITにおける「隣り合う動機付け間には強い相関がみられる」を検証したメタ分析。 確かに「隣り合う動機付け間には強い相関がみられる」が、その幅や相関パターンに具体的な証拠がないため、必然的に妥当性が低下している。あとOITは動機付けの軸を相対的自律…

{76}Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000).

自己決定理論の概論の1つ。 認知的評価理論、有機統合理論、基本的心理欲求理論、目標内容理論について触れている。 以下、筆者が作成した自己決定理論の6つのミニ理論に関する概要。 SDTは「人間は知的好奇心旺盛で、主体的であり、自己の統合を目指すべく…

{75}Sebastian Deterding. (2011)

SDTに基づいた、ビデオゲームプレイの動機付けモデルの提供。 ゲームプレイの動機は内発的動機付けで、特に自律性充足が主軸となる。CETに則り、ゲームプレイの文脈(環境)は動機付けに顕著な側面をもたらす。ゆえに、ゲームプレイにより起こる動機付け、喉か…

{71}二宮 理佳.(2022)

学習者視点による自律性獲得の推移を具体的に捉えたい質的研究。 大学留学生12名を対象。課外活動にて課題を課す。目的は日本語リスニング力の向上、大学の講義を聞き取れるようになるのが最終目標とした。週1回に内省提出を課した。大枠と方向性を共有し、…

{72}Terje Slåtten, Barbara Rebecca Mutonyi & Gudbrand Lien. (2020)

医療機関において、上司のリーダーシップがPsyCapの充足に繋がり、それが創造力の確保をもたらし、結果的に日常的なアイデアの表出に繋がっていることが示唆。 PsyCapは心理的資源、自己肯定感・効力感・レジリエンス・楽観主義からなる。これらの心理的資源…

{67}Sebastian Deterding. (2016)

ゲームプレイは、CETにより定義される自律性阻害の条件によって、統制的動機が伴うようになる。 以前からまとめていた、選択の余地を代表とする自律性の担保と強制の文脈の違いが「ゲームと宿題の違い」、という主張を支持する質的研究。 具体的には、ゲーム…

{66}Deci, Vansteenkiste, et al. (2017)

子の養育について親が心がけるべきことを動機付け、特に自己決定理論の観点から理論的に考察したもの。なおここで問われていることは養育に限らず教育・対人において有効である。 結論としては、子を1人の人間として順当に接することで大部分は満たされる。…

{65}Deci and Ryan (2022)

[76]とかDeci and Ryan (2017)の要約版。 GCT目標内容理論。特に、行動の目的の内容によって心理的欲求の充足の度合いが異なることを主張する。自己研鑽や受容など心理的欲求の直接的な充足を目的とする内発的人生目標と、地位や名誉など心理的欲求の直接的…

{64}Deci and Ryan. (2002)

自己決定理論の基礎情報。 認知的評価理論・有機的統合理論・因果性志向理論・基本的心理的欲求理論について述べられている。 参考文献 Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2002). Overview of self-determination theory: An organismic-dialectical perspective.…

{63}Patall, E. A., et al. (2018)

教員による日常的な自律性支援は日ごとの自律性動機付けとエンゲージメントの増加を予測し、同じく教員による日常的な自律性阻害は日ごとの統制的動機付けと不快感の増加を予測した。また興味のない活動の押し付けは日々の自律性動機付けと関与の減少を予測…

{45}Scott Nicholson (2014)

より良いゲーミフィケーションのための理論的考察。 「ゲームとは、目標や構造を持った遊びの一形態」(Maroney 2011)。目標の達成にはその基準を設ける必要があり、またルールを設ける必要がある。そしてこれらの設定は遊ぶ人みずからが定める必要がある。遊…

{53}Hyungshim Jang, Johnmarshall Reeve, Marc Halusic. (2016)

生徒が好む授業形態を聞き出し、それを実行した結果、同時に聞き出した好ましくない授業形態よりも自律性充足・エンゲージメント・学習成果が比較的高かった。 この示唆を裏付けるためには、別のサンプル、別の科目において同様のことを行い、"生徒が選択し…

{49}Richard M. Ryan, Edward L. Deci. (2020)

自己決定理論の概論(Deci and Ryan 2002)書いてから20年弱経ったし、ここらで一回関連研究をおさらいしてみる。→読み返し推奨 内発的動機付けは学習へのエンゲージメントを介しGPAに影響を与えている(Froiland and Worrel 2016)。 SDTは動機付けの重複を認識…

{51}Richard M. Ryan, Edward L. Deci. (2006)

SDTのうち、意思決定の権限、または意思決定のための情報を要求する欲求である自律性に関する議論点とそれに対する反論をまとめた論文である。読み返し推奨。というかいまいち把握しきれてない。 自律性の存在証明。因果関係、病理的証拠、神経的メカニクス…

{50}Xue-hua Bao, Shui-fong Lam. 2008

「選択の欠如が動機付けを低下させない場合が存在するが、それは周囲の親しい人との関係性が充足されているため、『集団に属する人』として納得しているから。これにより、選択の自由は自律性のみで担保されるものではない」 今回の文献では、選択がある状態…

{48} 島 義弘,馬 暁玲,稲垣 勉 (2020)

大学生を対象に調査したところ、授業選択の自由度が大きい科目では内的調整の傾向が、授業選択の自由度が低い科目では外的調整の傾向が見られた。年齢を調整しても差は有意であった。 認知評価理論で語られるような自律性の充足が授業における動機付けの傾向…

{40}Idit Katz, Avi Kaplan, Tamara Buzukashvily. 2011

子供が抱える宿題に対する親の動機付けは、親の欲求支援的行動を介し、子の宿題に対する動機付けに寄与していることを示唆。 具体的には、子の宿題を支援しようとする親の自律的動機付けと親の宿題に対する知覚された能力(広範的に捉えると、過去に学習した…

{38}要約:Deci and Ryan. 2000

動機付けに関する心理学について、2つの理論が欲求という概念を採用した。生理的欲求のうち組織の欠乏をもたらすものが動機付けとなる動因低減説と、後天的な心理的欲求が動機付けとなる欲求理論(murray needs theory)だ。これに対し、自己決定理論(SDT)は欲…

{37}要約:Maarten Vansteenkiste, Richard M. Ryan 2020

本論文は5つのテーマを主に議論を展開する。SDTの心理的欲求の拡張の可能性について、欲求不満と不適応について、心理的欲求と身体的欲求の相互作用について、欲求支援と欲求妨害の実践について、SDTモデルの普遍性について。 SDTの心理的欲求の拡張の可能性…

{34}要約:Ron Tamborini, Nicholas David Bowman, Allison Eden, Matthew Grizzard, Ashley Organ. 2010

本研究は、楽しさに関連する高次の欲求を検討することを目的として、Ryan (2006)の研究をもとに実験を行ったものである。 Ryan (2006)は楽しさを欲求の充足と定義し、それを裏付ける4つの研究を行った。これは、ビデオゲームを刺激材料とした楽しさと欲求の…

{30}要約:Thomas K.F.Chiu. 2021

本研究は、SDTで言及された心理的欲求を支援するための一連の技術的学習環境デザインを提案、この案が教員によるサポートよりも学生のブレンデッドラーニングへの関与を高めるかどうかを検証するものである。 学生の学習への関与は多次元的な概念であると考…