「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{96}Daniel Johnson and John Gardner. (2010)

ゲームジャンルの選好・心理的欲求(PENS)・性格特性(big five)の関係を調査したもの。

 

235名(男性82%,平均22歳)対象、71%がビデオゲーム学科所属の学生。オンライン調査。サンプリングは雪だるま式。現在の好きなゲーム(シューティング・スポーツシミュレーション・アクションアドベンチャー・ストラテジー,ロールプレイ)、PENSの没入・有能感・関連性・自律性、TIPIの外向性・協調性・誠実性・開放性・神経症傾向(感情安定性)について回答。

 

結果。感情的安定と没入には負の相関がみられ、より揺さぶられやすい人ほどゲームプレイ時に没入感を経験しやすいことが示唆された(原文はEmotional stabilityであり、この用語と神経症傾向の正負の関係は判明せず、今回は文脈より負の関係として扱っている)。感情的に不安定な人が暴力的なゲームに対して脆弱である可能性がある。

協調性が高い人はゲームプレイにてより有能感を感じたと報告

開放性が高い人ほど、ゲームプレイが予想外の経験をできることに悦びを見出している。開放性が高い人ほど自由度の高いゲーム(ロールプレイング等)を欲し、またその要素により楽しさを知覚することが示唆された。

シューティングゲームが好きな人は感情的安定が高い傾向にあった。また、シューティングとスポーツシミュレーションが好きな人は比較的没入を経験する機会に乏しいことが示唆された。こうした人たちは暴力的な描写(或いは競争等により喚起される攻撃性{70})に引っ張られないよう、一枚隔たりを設けたうえで接している可能性がある。

同様のプレイヤーは自律性の知覚が低かったが、これは自由に選択できる機会が少ないゲーム構造によるものだと思われる。

 

ゲーム内世界への没入を動機とする傾向はIGDを予測する{59}ことや、(空想・対処・逃避動機の相関が強いこと{57}を加味したうえで)現実からの逃避のためになるべく長くゲームをプレイしていたいという理論的解釈{60}、そしてRPG選好者の週平均プレイ時間が長い傾向にある{61}ことなどの知見と乖離しない結果。

感情的に不安定な人は没入を感じやすく、また没入を理由にゲームを選好している可能性がある。

 

 

参考文献

Daniel Johnson and John Gardner. 2010. Personality, motivation and video games. In Proceedings of the 22nd Conference of the Computer-Human Interaction Special Interest Group of Australia on Computer-Human Interaction (OZCHI '10). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 276–279.