「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{63}Patall, E. A., et al. (2018)

教員による日常的な自律性支援は日ごとの自律性動機付けとエンゲージメントの増加を予測し、同じく教員による日常的な自律性阻害は日ごとの統制的動機付けと不快感の増加を予測した。また興味のない活動の押し付けは日々の自律性動機付けと関与の減少を予測し、質問の機会の提供は日々の不快感の減少を予測した。

自律性支援と自律性妨害は、それぞれ後々の自律性支援/自律性妨害の認識のしやすさを助長した。また、強力な自律性支援/自律性妨害は、弱いレベルの自律性阻害/自律性支援の効果をかき消した。

自律性支援の1つである選択の提供は日々の自律的動機付けの増加ではなくエンゲージメントの増加を予測した。また、自律性阻害の環境にある時、選択の提供(選択の強制)は統制的動機付けを強化した。選択の提供は内在化の側面ではなく内発的動機付けに深く関わる要素なのかもしれない。

 

教員指導による生徒の動機付け・エンゲージメントの変動の縦断的分析。分析方法の問題から純粋な無作為抽出を採用できなかったのが一番の問題だろう。あとは一般化について、これは重ねるほかない。自己申告制なのはいつもの。

生徒の動機付けとエンゲージメントに関して、人口統計学的要素と有意な相関がみられたという。論文内ではこの効力を統制し最終的な結果を求めだしているが、やはり個体差からは逃れられない模様。

あと選択の提供の項目が奇妙な結果を残している。自律性支援の要素の1つとカウントされているが、自律性阻害の環境においては統制的動機付けを強化する要素として働いている。衝動の観点からも言われているように、「選択」「意思決定」のフェーズは動機付けにおいてかなり重きが置かれているように思える。因果の所在?

 

 

参考文献

Patall, E. A., Steingut, R. R., Vasquez, A. C., Trimble, S. S., Pituch, K. A., & Freeman, J. L. (2018). Daily autonomy supporting or thwarting and students’ motivation and engagement in the high school science classroom. Journal of Educational Psychology, 110(2), 269–288.