「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{81}三和 秀平, 外山 美樹 (2021)

教員の動機付けと子供の動機付けの関連、および自律性支援の媒介効果を検討する。

 

結果として、教科指導学習動機(三和・外山 2015)のうちの子ども志向は、教師が認知する自律性支援と正の相関を示し、子の認知する自律性支援を媒介してこの内的調整に正の相関を示すことを示唆した

これを測るために、2つの研究を用意。

研究1。小学校教員90名(女性73名,平均43.12歳)を対象。教科指導学習動機尺度と自律性支援の尺度(Wellborn et al. 1988)の回答を求めた。分析にはSPSS24とMplus8を使用。

研究2。関東地方と北陸地方の小学校6校の4~6年生、教員35名、児童1097名を対象。教員には教科指導学習動機尺度の回答を求めた。児童には自律性支援(Belmont et al., 1988; Williams &Deci, 1996を参照)の尺度と自律的学習動機付け尺度(西村 ほか 2011)の回答を求めた。分析にはMultilevel Modelを採用。

 

まず、全体的な効力の値が弱い。特にp値。慣例的なp<.05ではなく、有意傾向を参照して結論を出した。本論文の限界事項にはこれについて、サンプルサイズの増量を提唱している。ただ、子の自律性支援の知覚→子の自律的動機付けには有意な(p<.01)正の相関がみられた。媒介効果は示しているみたいだが、分散の割合はどれぐらいなのだろう。自律性支援を予測するのは、別の指標で図れる要素の可能性がある。

先行研究と結果は一貫している。子ども志向→子の自律性支援の知覚→子の自律的動機付けに有意(p<.10)なパスが示された。今回、内発的動機付けや熟達志向は有意なパスを示さなかった。子を思い、子のために思案するという他者志向が自律性支援の採用を促し、それが子の知覚を介し自律性動機付けと関連している可能性がある。子のために思案したいとする動機は、子の意思決定を蔑ろにしない、子の表出を辛抱強く待つなどの自律性支援の側面を見せるのかもしれない。

ただ、今回の結果だけでは、子ども志向の由来が分からない。Roth(2014)は教員がの自律的動機付けと自律性支援の関連を説いているが、子ども志向が自律的動機付けに当たるのか、子ども志向や他の志向の選択と欲求充足にどれほどの関りがあるのか。今回の結果はそれを直接的に示すものではない。それとも三和・外山(2015)にてその辺りが説明されているのだろうか。

 

 

参考文献

三和 秀平, 外山 美樹, 教師の教科指導学習動機は小学生の自律的な学習動機づけと関連するのか, 教育心理学研究, 2021, 69 巻, 1 号, p. 26-36,