「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{66}Deci, Vansteenkiste, et al. (2017)

子の養育について親が心がけるべきことを動機付け、特に自己決定理論の観点から理論的に考察したもの。なおここで問われていることは養育に限らず教育・対人において有効である。

結論としては、子を1人の人間として順当に接することで大部分は満たされる。子の意思決定を蔑ろにせず、行動に同伴し、視野を共有し、成果を相互に評価し合う。教員生徒間に見られる絶対的な正解が存在する空間を設けないこと。無意識的な「見下し」を自覚しこれをコントロールすること。子の意思決定を自分好みに作り変えようとアレコレ操作を試みることを中断すること。「あなたのためを思って」は親による自律性の阻害の表出である。真に子のためになる行動は、子の行動の動機を聞き、言語化し、修正点があるならば確たる根拠を添えて伝えること、確たる根拠がない躾は支配の表出であるため控えること。常識を言語化し論理的に伝えること。

というか、子への対応をそっくりそのまま友人とかに投げかけて、違和感を感じるようならやめたほうがいい。垣間見える違和感は、親子という極限の二者関係の中で表出する「誰も是正できなかった」病的な特性である。関係性動機付け理論に則れば、これでいける。

自己決定理論において、人間とは生来的に意欲的で自身の心身の統合を図る生物であり、欲求の発達を鑑みても、この本質は親も子も変わらない。

条件付きの愛情、または愛情の撤回。具体的には、「お前は今回、俺からの信頼を失った」を躾けの常とう句として用いた場合、愛着の揺らぎをもたらし、心理的欲求の阻害をもたらす。

親による子への欲求支援はなにをもたらすか。一般には、子は自立的志向性の割合が大きくなり、自主的な活動を好むようになる。精神的に安定し、屈強で、失敗を情報として捉えられるようになる。少なくとも、子による決定的な拒絶を貰うことはない。

 

 

参考文献

Bart Soenens, Edward L. Deci & Maarten Vansteenkiste.(2017) How Parents Contribute to Children’s Psychological Health: The Critical Role of Psychological Need Support. Development of Self-Determination Through the Life-Course pp 171–187