「ゲーム心理学」知見保管庫

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{79}岡田 涼 (2009)

OITにおける「隣り合う動機付け間には強い相関がみられる」を検証したメタ分析。

 

確かに「隣り合う動機付け間には強い相関がみられる」が、その幅や相関パターンに具体的な証拠がないため、必然的に妥当性が低下している。あとOITは動機付けの軸を相対的自律性の1次元でまとめてるけど、ホンマにそうなんかをきちんと試したところはないらしい。

なのでメタ分析。

結果。全般的には、相対的自律性が高くなるほど隣り合う動機付け間の相関は強くなった。また探索的因子分析を行ったところ、2因子が抽出。1つ目は相対的自律性を、2つ目は相対的な統制を示していると解釈できる。

 

相対的自律性が高くなるほど相関が強くなる傾向について、その動機付けが一般項なのか領域項なのかの違いが区別されていないことが挙げられる。統合的調整は外的な統制と内的な目的が統合され行動に葛藤が伴うことがないという一見最強に見える動機付けであり、その定義から動機付けの一般項、個人のパーソナリティを示すものととらえることもできる。一方、同一化的や内的などは行動に対する理解や選り好みなどのフェーズを挟むため、領域項の動機付けとして働いているとも考えられる。これを区別していないために、例えば統合的というパーソナリティの表出の一環として同一化的が出ている、なんて可能性もある。

相対的な統制について。直交する2つ目の因子の存在。[63]でも問われていた。自律性促進と自律性阻害は独立した要素であり、それぞれが交互に作用し最終的な関与に紐づくと。顕著なのは選択の提供だろう。この要素が自律性促進の文脈で出された時は関与増加を示し、自律性阻害の文脈で出された時は関与低下を示していた。自律性と統制は独立した2つの要素であり、それらが交錯してOITのような流れを作っている可能性がある。相対的な統制の計測や、2つを交えた考察も必要かも。

当初の目的である動機付け間の相関の指標は手に入った。

 

 

参考文献

岡田 涼, 自己決定理論における動機づけ概念間の関連性, パーソナリティ研究, 2009, 18 巻, 2 号, p. 152-160,