「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{45}Scott Nicholson (2014)

より良いゲーミフィケーションのための理論的考察。

「ゲームとは、目標や構造を持った遊びの一形態」(Maroney 2011)。目標の達成にはその基準を設ける必要があり、またルールを設ける必要がある。そしてこれらの設定は遊ぶ人みずからが定める必要がある。遊びを基軸にしたゲーミフィケーションの場合、まずそれをするかしないかの選択のフェーズを設ける必要がある。

「物語とは、認知、理解、説明のための中核的なパターであり、アイデンティティと歴史を解釈するための最も重要なツールである」(Simons 2007)。物語は効率よく世界を知ることができ、意思決定を助ける(Branigan 2006)。

遊ぶか遊ばないかの選択の他に、どのように遊ぶか、どのように関わるかを選択する必要もある(Rose and Meyer 2002)。選択の余地、自律性充足の1つの手段。

有能感の充足。なぜその行動が報われるのか、行動に対するフィードバックの提供が、プレイの手ごたえをもたらす(Kramlinger and Huberty 1990)。UIの洗練化、NPCによる補助など。

エンゲージメントの向上、そして関係性充足。フロー状態を導くための条件。またマルチプレイ以外にも、フォーラムや参考サイトなど、プレイヤーの予想外の方法による課題解決、コミュニティによる支援とつながり。

リフレクション(Kolb and Fry 1975)。経験を獲得し、内省の期間を設け、他の類似の経験と照らし合わせ、経験の一部を一般化し、抽象的な概念を獲得、より効率的な学習を促す一連のプロセス。なにをしたか、なぜそれをしたか、それを以て今後どうしたいかの言語化は、学習の近道である(Fanning and Gaba 2007)。→これ自体はふとした時に行うだろうが、これを意図的に仕向けるとなると難易度爆上がり。同じような主張は義務教育とかでもいっぱい聞いたが、その時は納得も理解もしなかった。それがもたらす利益が想像できなかったのだろう。バンドワゴン効果じゃないが、復習の価値を知るためには、復習による価値を得てみるのが一番早い。

 

ゲーミフィケーションを作る時は、プレイヤーに何をさせて、どういった成果を得たいかをきちんと設定しないと、目的が迷子のゲームのように迷走する。評価基準もわからないし。あとプレイヤーがなにを得られるかを知るためには、いっかい作る側がプレイヤーになったほうが早い、教員対象の自律性支援体験のように。

 

また、今回の提唱は、ポイント・バッジ・リーダーボードを導入してこれで成績あがるぞキャッキャしている人に向けたものであり、これを報酬型ゲーミフィケーションと位置づけそれなりに非難している。ただし、報酬型は短期的かつ魅力が見いだせない業務をやらせるときに有効としている。細かいことはDeci et al. (1999)に全部書いてある。

 

ゲーミフィケーションが現実のそれと遜色ないような経験として活きるために。単なる報酬手段としてではなく、脳に焼き付くような、統合のための情報を得られるような、そんなソフトウェアを目指す。

心理的欲求はその充足が自身の統合のために必要だからこそ求められる[38]。いいゲームはそれを充足してくれる。その体験は記憶に残り、見方を変え、人生を豊かにする。これを意図的にもたらしたいのがゲーミフィケーションであり、その大半は報酬の呈示による釣りである。

 

 

参考文献

Scott Nicholson (2014).  A RECIPE for Meaningful Gamification. Gamification in Education and Business pp 1–20