「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{71}二宮 理佳.(2022)

学習者視点による自律性獲得の推移を具体的に捉えたい質的研究。

 

大学留学生12名を対象。課外活動にて課題を課す。目的は日本語リスニング力の向上、大学の講義を聞き取れるようになるのが最終目標とした。週1回に内省提出を課した。大枠と方向性を共有し、ここに至るやり方は基本的に自由とした。やり方はもちろん、どれぐらいやるか、最終的な上達度も不問とした。教員による自律支援体制アリ。また事前説明にて変化に注視するよう伝えた。

 

結果として、このやり方は参加者全員から心理的欲求の充足が報告され、また多くの人が習慣化への結びつきや、因果性志向理論によるところの自律性志向が強化される傾向にあった。

受講者全員が高いレベルの自律性充足・有能感充足を示した。小さな変化を認知し、有能感が充足され、より強い動機付けがなされる。また自律性充足もなされてるため、茶々が入らず、また「有効打」の即実践もできた。なにをするも、なにを以てして成功とするかも自由。その行動には手厚いバックアップがある。

「躊躇わず挑戦できる」環境がそこにあった。これは昨今の「解決に至れればなにしてもいい」タイプのゲームに主に見られる心理的欲求充足の方法である。
外在的な評価をほとんどかまさず、最終的な目標を提示し、手法を提示し、必要な人にチュートリアルを設け、自分なりの基準で自分を評価でき、自分なりの方法で自分を強化できる。

 

これをするためには、最低限その分野における効力感を一定以上自力で獲得できる能力と熟練が必要になる(今回の参加者は日本語能力試験1級~2級所持者)。ただ、学生Kのような内省初心者であっても最終的にはかなり高い効力感を実感していたため、多少の被統制的志向は無視できる可能性がある。やはり土台となるのは効力感、有能感の充足なのかもしれない。

「やる気が出ない時も、とりあえずやってみる。そうすれば自然とやる気が出てくる」→有能感充足によるエンジン温まり。

紀要論文のため、注意せよ。

 

 

参考文献

二宮 理佳.(2022) 自己決定と内発的動機づけ―自由な発想を引き出す自律性支援― 人文研紀要 102巻 pp405 - 436