{49}Richard M. Ryan, Edward L. Deci. (2020)
自己決定理論の概論(Deci and Ryan 2002)書いてから20年弱経ったし、ここらで一回関連研究をおさらいしてみる。→読み返し推奨
内発的動機付けは学習へのエンゲージメントを介しGPAに影響を与えている(Froiland and Worrel 2016)。
SDTは動機付けの重複を認識しており(Litalien et al. 2017)、これへの対処として相対的自律性を計る尺度、または各動機付けの点数を足し合わせたスコアを用いる例が増えている。なお後者に関しては清水(2019)がいちゃもんつけてたような…。
欲求充足するような授業形態と学業成果は正の相関。内発→関与→GPAのパスが通るなら驚きもしない。
選択の余地は特に自律性欲求の充足をもたらす(例:Bao & Lam, 2008; Reeve, Nix, & Hamm, 2003)。選択の強要は充足をもたらさない(例えば、Assor, Kaplan, & Roth, 20
02; Moller, Deci, & Ryan, 2006)ため、選択と自律性は完全なイコールではないが、基本的には、選択肢は自律性充足をもたらすと考えて良い(Patall, Cooper,
and Robinson, 2008)。
自律支援型と統制型の教師の特徴はReeve and Jang (2006) に。
基本的心理欲求理論に則った場合、心理的欲求の充足は精神衛生上好ましいことだし、それを示す証拠もある。
なにによって満たされるかは文化によって異なるが、満たされた結果どうなるかは一様である(Craven et al. 2016;Reeve, Ryan, &Deci, 2018)。
達成目標理論とのつながり。ちょくちょく見かけるよね。
ハイステークステストを主題とした量的指標による評価への批判。基本的に、構造主義とかSDTとかを専門にする人って、量的な評価形態を酷評する傾向にある。あと競争、「百害あって一利なし」と言っちゃう人もいるぐらいだから。でも確かに、義務教育だと無視できない話題なのよね。前思春期あたりに"能力の安定性"信念ができて、失敗と能力の紐づけが現れて、動機付けに影響を与えるようになるから(Dweck 2002)。この時に「格付け」が学習できちゃう環境は、内発の発育の観点からは好ましくないのかも。なおハイステークステストに関する愚痴はRyan and Brown (2005)にて。
自律支援型の教育はなかなかうまくいかない、教員が欲求充足できるような環境じゃないから。圧力のサンドイッチPelletier, Séguin-Lévesque, and Lebault (2002)状態でどうやって自律的であれと。一応、教員が欲求充足されると、伝播する形で生徒も充足されるChang, Leach, and Anderman(2015)という示唆を置いておく。
SDTはここ数十年でいろんなところで使われてきた。都度修正は入るが、それでも幅広い分野において論理が通用し、ブレない結果が得られるという事実は、SDTの信頼性と妥当性の高さを証明するものである。
以下、やりたいことリスト。神経科学とのコラボ。自己申告制テストの改良。ゲーミフィケーション。従来の動機付け理論との折り合い。社会人の動機付けの調査。自律支援型の授業の実態調査。文化的要因による差異の追求。国家間の教育システムの批判的比較の軸として用いる。
参考文献
Richard M. Ryan, Edward L. Deci. Intrinsic and extrinsic motivation from a self-determination theory perspective: Definitions, theory, practices, and future directions. Contemporary Educational Psychology Volume 61, April 2020, 101860