「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{100}Reinecke Leonard, et al. (2012)

心理的欲求の充足/阻害がゲームプレイの選択にどうかかわっているか、欲求阻害の回復行為が現れるかを実験で確かめたもの。

 

米国中西部の大学生111名(男性28名 平均19.96歳)対象。フライトシミュレーターを使用。あらゆる操作が求められる高条件・速度や舵の操作を求められる中条件・ほぼ自動操作の低条件の3つをそれぞれプレイしてもらう。その後、気分管理理論(MMT; Zillmann, 1988)でおなじみの感情表出を正しく判断する課題を用い、操作的に正/負のフィードバックを与える。フィードバックを経たのち、再びフライトシミュレーターをプレイするが、この時参加者が希望したものをプレイできる。

 

結果。操作的に負のフィードバックを与えられた人は、後のプレイにてより高難度な操作を求める傾向にあった。負のフィードバックを与えられた人は有能感と自律性の知覚が低く、特に今回の条件では有能感の一時的な欲求不満が高難度のプレイの選択に有意に関わっていた。欲求不満からの回復のための対処的行動を示唆している。欲求充足は楽しさの知覚を有意に予測した。

この実験はゲーム内で発生する「できなかった、くやしい。もう一度」という感情表出の完璧な証左ではない。実験はゲームとは関係ない課題にて欲求不満を作り出し、その解消のための選択を観測した。しかし、不満解消のための行動と選択という今回導き出されたモデルはある程度の一般性を保有していると思われる。

また、ゲームとは関係ない課題の欲求不満をきっかけにより高濃度のゲームプレイを所望する様は、対処動機{57}に共通するお話である。現実では満たされなかった心理的欲求の回復を求めて、つまり気晴らしを求めてゲームをプレイする傾向は、SDTとMMTの組み合わせでも説明できるかもしれない。

{99}でも言及したが、こうした欲求不満による動機は即時的効果であり継続的効果ではないことを推測している。継続的に欲求不満にさらされればそれは離脱の要因となり、離脱に至るまでの"猶予"を構成する要素に欲求充足の度合いが絡んでいると推測「あともう少しでできそうなんだ、だからあと1回だけトライするぜ」。このあたりは動機付けレジリエンスのお話だろうか。

 

 

参考文献

Reinecke Leonard, Tamborini Ron, Grizzard Matthew, Lewis Robert, Eden Allison, and David Bowman Nicholas. Characterizing Mood Management as Need Satisfaction: The Effects of Intrinsic Needs on Selective Exposure and Mood Repair. Journal of Communication, 2012, Volume 62, Pases 437-453