「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{76}Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000).

自己決定理論の概論の1つ。

認知的評価理論、有機統合理論、基本的心理欲求理論、目標内容理論について触れている。

 

以下、筆者が作成した自己決定理論の6つのミニ理論に関する概要。

SDTは「人間は知的好奇心旺盛で、主体的であり、自己の統合を目指すべく奮闘している」と仮定したうえで「社会的文脈などの状況次第でその成長志向は変動する」と主張している。この社会的文脈などの状況が成長志向(内発的動機付け)に及ぼす影響を議論したのが認知的評価理論CET

でも人間は内発的動機付けだけで行動しているわけではない。人から言われたこと(外発的動機付け)もこなす必要がある。でも人から指示されたことであっても、それをただやる人とか、意欲的に取り組んでいる人とかがいる。この違いを説明するのが有機体統合理論OIT

調べていく中で、CETにおける内発的動機付けの条件とか、OITにおける意欲的に取り組める外発的動機付け(自律的動機付け)の条件が分かってくる。それはある3つの欲求を満たすこと、そしてその欲求を阻害しないこと。3つの欲求はそれぞれ、自分で考えて決定するために必要なものへの欲求(自律性)、自分の力で達成した実感を知覚したい欲求(有能感)、自分で考えることや達成のための努力を認めてくれる関係の欲求(関係性)。3つの欲求の充足は人間にとって不可欠であり、また欲求充足は幸福感につながることを主張するのが基本的心理欲求理論

 

3つの心理的欲求の充足が幸福感とか主体的に生きるために必要だって言ったけど、じゃあどういった人がこの欲求を満たしやすいのかを調べたのが目標内容理論。いまのところ、人間がもつ人生レベルの目標の方向性によって満たしやすいかが変わることがわかっている。大雑把に、欲求充足を重視するか(内発的人生目標)、それ以外のまがいものを重視するか(外発的人生目標)の2つに分けられる。この場合、前者のほうが満たしやすい。

 

人によってはやたら意欲的だったり、やたら怠け者だったりするけど、この個人差がなんで生まれるのかを動機付けの観点から説明するのが因果志向性理論。いまのところ、めっちゃ主体的であろうとする自律的志向性、周りの評価に乗っ取られて操り人形みたいになっちゃってる被統制的志向性、無気力でなーんにもやりたくなさそうな無価値的志向性の3つがある。で、自律的志向性が一番いいと言われている。ちなみに、どの志向性を選択するかは、いままでどれぐらい心理的欲求が満たされてきたかに由来するよ。

 

心理的欲求のなかの関係性って特に対人関係によって満たされたり阻害されたりするけど、当然その相手も心理的欲求を持ってるしそれを満たしたいと思っている。この対人関係による欲求充足とか阻害とかに注目したのが関係性動機付け理論

 

 

参考文献

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.