「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{50}Xue-hua Bao, Shui-fong Lam. 2008

「選択の欠如が動機付けを低下させない場合が存在するが、それは周囲の親しい人との関係性が充足されているため、『集団に属する人』として納得しているから。これにより、選択の自由は自律性のみで担保されるものではない」

今回の文献では、選択がある状態で自由に選択させたときvs親しい人が選択したという実質的な強制のとき、また同実験条件下にて自律性充足と関係性充足を計り、自律性と関係性に交互作用はないが選択の自由と関係性に有意な交互作用が働いていることを理由に、選択の自由が自律性オンリーの要素ではないことを主張している。

私が思うに、選択の自由が真に関係性の影響を受けているなら、関係性と自律性が選択の自由を介しモチベを維持しているというパスが有意かを確かめるべきだろう。

また、関係性による内在化のプロセスは、選択というより説得のプロセスに近い。最終的には提示された選択に納得という意思決定を下せるため、この時は関係性と自律性の充足が成されるだろうが、そうでないときは言いくるめに近い状況になる。この説得のプロセスによる納得を、選択の自由に含めるかは慎重になるべきである。

「どれをやるか」と「やるかやらないか」のプロセスはどちらも選択の自由に含まれるが、内訳は異なる。前者は選択肢間の比較が目立つが、後者は自身の知覚した能力等の吟味が目立つ。今回は自由に選べるという「どれをやるか」と親しい人の選択下という「やるかやらないか」の条件下の対立になってしまった。

今回は、選択の欠如による動機付けの低下は関係性の充足により補填できるが、その事実を踏まえたとしても選択の自由が担保されている時が比較的動機付けが強かったため、選択の自由による自律性の充足の重要性も示唆された、という結論で〆る。

この論文はもう少し精読するべきである。選択の自由と自律性の測定尺度の違いあたりが肝か。或いは私の読み違いか。

 

 

参考文献

Xue-hua Bao, Shui-fong Lam. (2008) Who Makes the Choice? Rethinking the Role of Autonomy and Relatedness in Chinese Children’s Motivation. Child Development Volume 79, Issue 2 p. 269-283