「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

第一章

学習意欲→学ぼうとする心理現象の総称。

学習→練習や勉学といった体験の結果として生じる行動の能力の永続的な変化、あるいは知識、行動パターン、能力の獲得プロセス。意図的・無意識的問わない学習による不可逆的な変化。変化が最小要素のため、学習は普遍的に存在する。認知心理学では、長期記憶の追加的な変化と定義づけられている[187]、雰囲気は近しい。

習慣→学習された振る舞い。これを学習するプロセスを習慣化とする。

態度→学習における態度とは行動の方向性を決定づける要因の1つ。対象に対する心象などがこれに当たり、意欲とはけして切り離せない。態度も学習されるものであり、伴い、学習意欲も学習されるもの、つまり後天的に、いくらでも変化していくものである

エンゲージメント→心理的没入。心理的関与の深いさま。どの程度課題に注視しているかなどの行動的、興味や楽しさなどの伴っている感情を指す感情的、認知戦略の使用の詳細などを指す認知的、の3つに分けられる。

自己調整学習→学習者自ら学習計画を立て、自律的に実行する学習の在り方。[210]などの論文を見る限り、認知的エンゲージメントの側面が強い。

 

動機づけ→行為が起こり、活性化され、維持され、方向づけられ、終結する現象。行動の強さや回数などの量的側面、行動が何を目的としているかなどの質的側面により、計られる。何が人間の行動にエネルギーを与えるのか、なにが行動を方向付けるのか、その行動がどう維持されるか。動機づけはこの3点を中心に関心が向けられた。単に力の強さ、量的側面では計れない。

動機づけの評価方法は、行動観察・他者評定・自己報告の3つ、教育心理学では3番目が圧倒的に多い[78]。動機づけの行動指標はReeve (2009)を参照。

動機づけは、個人一般の特性(特性レベル)、特定の分野に対応した特性(領域レベル)、その場における状況から発言する特性(状況レベル)の3つの水準により、揺らぐ。これは相互作用的であり、例えば、数学のテストでの成功体験が、数学領域における動機づけ、また個人の自己肯定感につながる、といった感じ。

動機→目標志向的な行為を引き起こす働きを持つ、個人内で活性化された心理状態。個人内要因と個人外要因が相互に働き、発現する。

個人内要因は、どう認知しどの戦略を採択したかなどの認知要因、快を求め不快を避けるという快楽原理で解釈される感情要因、生理的欲求や心理的欲求(生理的メカニズムに直接依存しない欲求)などの欲求要因、からなる。これらは相互作用する。

個人外要因は、環境要因。状況・制度・文化などが絡む。大学受験という制度の結果を受けて認知戦略を変えたり、にぎやかな周囲の影響を受け感情が高ぶったり、友人との関係性が欲求を言語化させたり、など。また、個人も環境要因に手を加えることができるため、やはり相互作用である

 

学習意欲→学ぼうとする心理現象の総称

→学習という状態に対する動機づけであり、学びたいとする欲求と、それを達成したいとする認知による複合的心理状態。接近動機づけであり、自己効力感(特性レベル)や学習環境(領域レベル)により強化される。

→学習活動に対するエンゲージメント状態。

「それを達成したいとする認知」とある通り、行為に対する一定の価値、または目的を見出さないと、やっていけない。また、行為への没頭[80]も考えられる。

前者は達成原理、後者を没入原理とし、どちらも内発的動機付けに分類でき、行動に対する深い理解、もしくは目的的行動の達成のために、深い学習をもたらす。

そうでないもの、例えば、外的調整、自我関与、他者依存の動機は外発的動機づけである。課題達成とは別の目的を達成するための、手段的行動といえる。

ただし、内発的動機付けと外発的動機付けは共存しうる[77]。例えば、課題達成により得た報酬で好きなことを行う、それに没頭できるし自分にはこれしかないと思い込みもある、といった具合に。が、外発的動機付けが優勢の場合、行動は促されづらくなる、浮気しやすくなる。

 

考えうる要因は人によって全く異なり、相互作用しあい、当の動機づけも純然たるものはない。しかも不可逆的に変化しつづけるのだ。

ゆえに、本人でさえも動機づけのリアルタイムでの言語化は難しい。

であれば、ある状態を固着させようとするのではなく、少しずつ変化していくよう、促すのが適当である。

{211}Clara Schumacher, et al. 2017

学習分析の効力を検証する質的・量的調査。

 

Learning analytics use static and dynamic information about learners and learning environments, assessing,eliciting and analyzing them, for real-time modeling, prediction, and optimization of learning processes,learning environments, and educational decision-making (Ifenthaler, 2015).

学習分析では、学習プロセス、学習環境、教育的意思決定のリアルタイムモデリング、予測、最適化のために、学習者と学習環境に関する静的および動的な情報、評価、抽出、分析を使用します(Ifenthaler, 2015)。

 

質的調査。学生が学習分析のどのような特徴を期待するか、またニーズは何かを調査する。探索的研究。大学院生20名(男性6名)対象。5分程度の講義で学習分析の基本的な概念を説明。その後学習分析に特徴に関する3つの質問に対し、口頭またはホワイトボード等での回答を求められた。

分析にはf4anaylsis (www.audiotranskription.de)を用いる。

結果。大多数の学生(大学院生)にとって、学習分析システムは学習計画や研究活動に役立つとの評価を得た。学生の要求は、基本的なリマインダー機能、自動化されたToDoリスト、課題提出についてのあれこれなど多岐にわたった。

参加者の大多数は、システムが利用者の学習分野に適応した評価を提供すべきだとした。また、直接的で有効なフィードバックを、教科ごとに受け取りたいとした。進捗状況の表示。生徒間との交流、生徒教員間の交流もサポートするべきと挙がった。また、休憩時間のリマインドも欲しいとの意見もあった、時間管理に関する事項である。

学習行為に関する監視として認知し、自律性が下がるという意見もあった。また、オンライン学習の特性による気の散り様、成績悪化に関するフィードバックによる負の影響を心配する声が上がった。

 

量的研究。仮説として、学習分析システムは生徒の動機により効力が異なること、また生徒間でシステムの評価に差が生じること、学習の観点から高い評価を得た時・特徴が侵略的でないとした時・複雑ではないと認識しているとき・有用ではないと考える時に学生は学習分析システムを利用する意志が強いとした。

手続き。216名(男性73名 平均23.83歳)対象。オンライン調査。

学習分析システムの詳細は以下。1:オンライン学習に費やした時間。2:学習補助の提案。3:コース修了のための推奨学習。4:提供された学習教材の評価尺度。5:進捗と目標表示。6:タスク完了のための目安時間。7:自己評価のプロンプト。8:進んだ学習推奨。9:仲間との比較など。10:カレンダー機能。11:学習内容に関連したニュースを表示。12:旧学習内容の改定。13:課題に対するフィードバック。14:期限に対するリマインダー。15:学習履歴から関係性のあるコースの推奨。

学習分析ベネフィット尺度LAB、学習分析のプライバシーアンケートLAP、自己調整学習尺度SRLS、学習規模に応じた技術活用TUL。

結果。まず学習分析システムの各項目は、生徒間の評価が異なることが立証された(F(14,3225) = 48.069, p<.001, η2= .173)。リマインド機能はニュース表示機能よりも、フィードバック機能は自動おすすめ機能よりも、高く評価された。

事後比較により、自己評価のプロンプトは課題のフィードバックよりも、コース修了のための推奨学習は学習補助の提案よりも、それぞれ評価が高い。提示された学習に関する特徴に対する学生の評価は有意に異なることが示された。

3つ目の仮説における4条件は、すべて学習分析システムの使用意欲に正の予測を立てた。

 

以上より、学習分析システムは、学習者が学習進捗と状態を理解し、また進捗のためのサポート機能を充実させるべきとした。一貫して、フィードバックと自律性支援の項目が効力として発揮されている。

また、進捗機能や明朗快活なフィードバック、リマインド機能、仲間間のやり取りや教員のやり取り、その他利便性のための可視化は、ゲーミフィケーションと共通するところが多い。あちらと違うのは、こっちは認知的に有意な学習のための設計を行っているため、単なる焼き増しのポイントを追加しているわけではない。これはこの研究が探索的研究だからというのもあるが。

ここから、ゲーミフィケーションで用いられる複数の理論[103]の知見を統合し、認知的・行動的・情動的それぞれの分析で一致する箇所を特定し、その効力を計るのはどうだろうか。

 

 

参考文献

Clara Schumacher, Dirk Ifenthaler. Features students really expect from learning analytics. Computers in Human Behavior, Volume 78, 2018, Pages 397-407, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2017.06.030. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563217303990)

{210}Fiorella, L., Mayer, R.E. 2016

生成学習理論を基盤とした、特に表出としての学習方略についてのまとめ。

 

Generative learning theory has its roots in Bartlett (1932) view of learning as an act ofconstruction, in which people invest effort after meaning by integrating new experiences withtheir existing knowledge structures or schemas.

生成学習理論は、学習を構成行為とみなすBartlett(1932)の考え方に根ざしており、人々は新しい経験を既存の知識構造やスキーマと統合することによって、意味の後に努力を投じるというものである。

Wittrock (1974, 1989) pioneered efforts to apply these early insights toward a theory ofmeaningful learning relevant to education.

Wittrock (1974, 1989) は、これらの初期の洞察を、教育に関連する意味のある学習の理論に適用しようとする取り組みの先駆者である。

Wittrockのモデルは、学習者が自身の知識と統合できるものとして認識や意味を再生成するという前提のもと、意味のある学習が意味の再生成とその伝達からなるとした。

SOIモデルについて。

情報をワーキングメモリで選別、選別した情報を整理し、長期記憶との統合を計る。このプロセスは生成的処理と呼ばれる。また、メモリによるメタ認知戦略についても考慮されている。

以前言及した3つの戦略のうち、認知戦略は選別の段階で、メタ認知戦略は組織化などの監視において、資源管理は全体の負荷を軽減ないしメモリ確保のために行われる、といった感じだろうか[208]。[207]で要約した手順は、こうした生成的処理の意図的な管理を目指している。

 

以下、生成学習理論に則った、意味のある学習のための方法8選。

要約。学んだ内容を自身の言葉に変換し、簡潔な文章でまとめること。このブログがそのまま参照例となる。まとめる作業自体が学習だし、読み返すのにも最適。慣れない人には情報の取捨選択が一番難しいと考えられるため、何を基準に選択していくかなどの指導は必要。

マッピング話し言葉や単語を、コンセプトマップやナレッジマップなどつながりや関係を可視化した図にまとめること。パス分析みたいなものができたりできなかったりする。可視化って大事よほんと、見ただけで分かるようにするっていう多大な工夫が必要だし。マップを作るうえで、作り方を熟知していなかったり、作る手間が多くてやめたりすることがある。これはHTML教材などテンプレートを設けてやるのがいいかも。

描写。学習内容を描写する非言語的要素の作成などが挙げられる。ノートの端っこに落書き感覚でちょこっと書いたおふざけ絵、あれが利く、というかあれだけ覚えているなんてこともあるだろう、それだよ。「特に描写に過剰な労力をかけない限り」これらは学習効果を発揮する。図示を支持したいのなら実際の描写を見せるなど具体的に指示し、余白を盛大に設け、場合によっては基礎知識を何回か学んでから描写に入るのがおすすめ。

想像。心象描写の作成と発展。未完成でいい、もっとイメージを。ただ物理的描写を伴わないため、何を描写するかを定義しなければ"ばなな(思考作用が正常に機能せず動機ロストに近い状態で呆然としているさま)"で終わってしまう。またその性質上、事前知識がある人のほうがより効果的である、というより事前知識が必須になってくる。

自己テスト。学習内容のより実践的な状況に遭遇した時の問題解決などを指す。動機づけを学んで、ゲーミフィケーションを学んで、その次は実際にゲームをプレイして「ここがまさに学んだところ」を復習する、あるいはHabiticaをダウンロードして使い心地と経験した動機を記録するなど。知識の統合を推し進める。みんなが想像するようなテストというよりは、小論問題が近いかもしれない、より幅広な議題を設けて事前知識をもとに挑むような。学んだ内容の節目節目で行うのがいいのかもしれん。

自己説明。学習中に自分自身に教えるべき授業の内容を説明すること。乱雑になった頭の中を独り言を介して整理していくイメージ、そして整理の中で答えがわかり一人興奮するさまも含む。自分自身に対する説明なので、説明自体は最悪自分で理解できるものであればいい。メタ認知戦略の具体的な表出の1つといえる、この感覚がわからない人がこれを履修するのは結構難しい。

教示。自分が学んだ内容を他人に教える。自己説明との違いは「他者に教える」というプロセスが入ることで、他者にも通じるぐらいの一般性を説明に持たせる必要があること、そして他者からのフィードバックや議論を交えることができること。自己説明が難しい場合は、他者と共同で教え、教えられのほうが効率がいいかもしれない。

その他物理的表出ジェスチャーや実物を用いた説明。非言語的な描写を介するため認知負荷理論[167]的にも優しい、文章の理解が捗る。また上記の心象描写や図示、自己説明においても有効な手段である、慣れないうちは併用するのが好ましい。ただしイメージが実物の出来に引っ張られる可能性がある。なお、ジェスチャーや実物を判別できるだけの事前知識は必要となる。

 

今回上げた戦略は0点を30点にすることは難しいが、30点から70点や90店に引き上げることを可能にする戦略ばかりである。すべての方略に事前知識の優位性が目立つため、きっかけさえ得られない例外にこの戦略が当てはまるかは不明だが、そうでない大多数にとっては有用に使えることが実証されている。要約については古くからその有用性が認められているから、これを試すのは全然ありだと思うです。

 

 

参考文献

Fiorella, L., Mayer, R.E. Eight Ways to Promote Generative Learning. Educ Psychol Rev 28, 717–741 (2016). https://doi.org/10.1007/s10648-015-9348-9