「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{211}Clara Schumacher, et al. 2017

学習分析の効力を検証する質的・量的調査。

 

Learning analytics use static and dynamic information about learners and learning environments, assessing,eliciting and analyzing them, for real-time modeling, prediction, and optimization of learning processes,learning environments, and educational decision-making (Ifenthaler, 2015).

学習分析では、学習プロセス、学習環境、教育的意思決定のリアルタイムモデリング、予測、最適化のために、学習者と学習環境に関する静的および動的な情報、評価、抽出、分析を使用します(Ifenthaler, 2015)。

 

質的調査。学生が学習分析のどのような特徴を期待するか、またニーズは何かを調査する。探索的研究。大学院生20名(男性6名)対象。5分程度の講義で学習分析の基本的な概念を説明。その後学習分析に特徴に関する3つの質問に対し、口頭またはホワイトボード等での回答を求められた。

分析にはf4anaylsis (www.audiotranskription.de)を用いる。

結果。大多数の学生(大学院生)にとって、学習分析システムは学習計画や研究活動に役立つとの評価を得た。学生の要求は、基本的なリマインダー機能、自動化されたToDoリスト、課題提出についてのあれこれなど多岐にわたった。

参加者の大多数は、システムが利用者の学習分野に適応した評価を提供すべきだとした。また、直接的で有効なフィードバックを、教科ごとに受け取りたいとした。進捗状況の表示。生徒間との交流、生徒教員間の交流もサポートするべきと挙がった。また、休憩時間のリマインドも欲しいとの意見もあった、時間管理に関する事項である。

学習行為に関する監視として認知し、自律性が下がるという意見もあった。また、オンライン学習の特性による気の散り様、成績悪化に関するフィードバックによる負の影響を心配する声が上がった。

 

量的研究。仮説として、学習分析システムは生徒の動機により効力が異なること、また生徒間でシステムの評価に差が生じること、学習の観点から高い評価を得た時・特徴が侵略的でないとした時・複雑ではないと認識しているとき・有用ではないと考える時に学生は学習分析システムを利用する意志が強いとした。

手続き。216名(男性73名 平均23.83歳)対象。オンライン調査。

学習分析システムの詳細は以下。1:オンライン学習に費やした時間。2:学習補助の提案。3:コース修了のための推奨学習。4:提供された学習教材の評価尺度。5:進捗と目標表示。6:タスク完了のための目安時間。7:自己評価のプロンプト。8:進んだ学習推奨。9:仲間との比較など。10:カレンダー機能。11:学習内容に関連したニュースを表示。12:旧学習内容の改定。13:課題に対するフィードバック。14:期限に対するリマインダー。15:学習履歴から関係性のあるコースの推奨。

学習分析ベネフィット尺度LAB、学習分析のプライバシーアンケートLAP、自己調整学習尺度SRLS、学習規模に応じた技術活用TUL。

結果。まず学習分析システムの各項目は、生徒間の評価が異なることが立証された(F(14,3225) = 48.069, p<.001, η2= .173)。リマインド機能はニュース表示機能よりも、フィードバック機能は自動おすすめ機能よりも、高く評価された。

事後比較により、自己評価のプロンプトは課題のフィードバックよりも、コース修了のための推奨学習は学習補助の提案よりも、それぞれ評価が高い。提示された学習に関する特徴に対する学生の評価は有意に異なることが示された。

3つ目の仮説における4条件は、すべて学習分析システムの使用意欲に正の予測を立てた。

 

以上より、学習分析システムは、学習者が学習進捗と状態を理解し、また進捗のためのサポート機能を充実させるべきとした。一貫して、フィードバックと自律性支援の項目が効力として発揮されている。

また、進捗機能や明朗快活なフィードバック、リマインド機能、仲間間のやり取りや教員のやり取り、その他利便性のための可視化は、ゲーミフィケーションと共通するところが多い。あちらと違うのは、こっちは認知的に有意な学習のための設計を行っているため、単なる焼き増しのポイントを追加しているわけではない。これはこの研究が探索的研究だからというのもあるが。

ここから、ゲーミフィケーションで用いられる複数の理論[103]の知見を統合し、認知的・行動的・情動的それぞれの分析で一致する箇所を特定し、その効力を計るのはどうだろうか。

 

 

参考文献

Clara Schumacher, Dirk Ifenthaler. Features students really expect from learning analytics. Computers in Human Behavior, Volume 78, 2018, Pages 397-407, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2017.06.030. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563217303990)