「ゲーム心理学」知見保管庫

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{187}Sweller 2005

ワーキングメモリに関する概論。

 

Geary(2007; 2008; 2012)に則り知識を分類。言語能力や顔の識別や一般的な問題解決能力など進化論的な考え方において生存のために必須とタグづけられる知識を一次知識、学術的な知識やその他教養などその習得に社会的・文化的理由が必要となる知識を二次知識と仮定する。認知負荷理論はこのうち二次知識の習得について触れている。

学習とは長期記憶の追加的な変化と定義される。二次知識の長期記憶への移行が、指導教育の第一目標となる。項目の暗記が無条件で支持されるわけではない。単にアルファベットを覚えても、その用い方を学習者が咀嚼しなければ、つまり既知の知識とのつながりが生じなければ、長期記憶に変化は生じず、これは何も理解していないことを指す。

新規の二次知識を扱うとき、ワーキングメモリは保持の観点からすれば非常に弱く、特別に訓練しなければ情報の構成要素を7つ程度しか保持できず、またほぼすべての内容を20秒以内に失う。充分な長期記憶はワーキングメモリによる処理の補助となる、それは充分に書き込まれた地図のように機能する。情報処理のための道しるべ、余計な情報を選別する際の基準、抽出した情報を効率よく咀嚼するための道具として機能する。

ワーキングメモリがタスクを処理するときにかかる負荷は3つに大別される。目的に沿った内容を抽出・把握するときに生じる内的負荷、目的以外の情報を除外するときに生じる外的負荷、把握した内容を咀嚼するときに生じる生得的負荷。内的負荷と生得的負荷は正の相関関係にあり、内的負荷は外的負荷に圧迫される、つまり余計な情報の処理に手間取っているときは学習は遅々として進まない。そして生得的負荷が長期記憶の定着につながる。そのため、外的負荷を減らし、内的負荷を増やす教材設計が生得的負荷を増やし、長期記憶の定着につながる。

 

 

参考文献

Sweller, J. (2005). Implications of Cognitive Load Theory for Multimedia Learning. In R. E. Mayer (Ed.), The Cambridge handbook of multimedia learning (pp. 19–30). Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/CBO9780511816819.003