「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{210}Fiorella, L., Mayer, R.E. 2016

生成学習理論を基盤とした、特に表出としての学習方略についてのまとめ。

 

Generative learning theory has its roots in Bartlett (1932) view of learning as an act ofconstruction, in which people invest effort after meaning by integrating new experiences withtheir existing knowledge structures or schemas.

生成学習理論は、学習を構成行為とみなすBartlett(1932)の考え方に根ざしており、人々は新しい経験を既存の知識構造やスキーマと統合することによって、意味の後に努力を投じるというものである。

Wittrock (1974, 1989) pioneered efforts to apply these early insights toward a theory ofmeaningful learning relevant to education.

Wittrock (1974, 1989) は、これらの初期の洞察を、教育に関連する意味のある学習の理論に適用しようとする取り組みの先駆者である。

Wittrockのモデルは、学習者が自身の知識と統合できるものとして認識や意味を再生成するという前提のもと、意味のある学習が意味の再生成とその伝達からなるとした。

SOIモデルについて。

情報をワーキングメモリで選別、選別した情報を整理し、長期記憶との統合を計る。このプロセスは生成的処理と呼ばれる。また、メモリによるメタ認知戦略についても考慮されている。

以前言及した3つの戦略のうち、認知戦略は選別の段階で、メタ認知戦略は組織化などの監視において、資源管理は全体の負荷を軽減ないしメモリ確保のために行われる、といった感じだろうか[208]。[207]で要約した手順は、こうした生成的処理の意図的な管理を目指している。

 

以下、生成学習理論に則った、意味のある学習のための方法8選。

要約。学んだ内容を自身の言葉に変換し、簡潔な文章でまとめること。このブログがそのまま参照例となる。まとめる作業自体が学習だし、読み返すのにも最適。慣れない人には情報の取捨選択が一番難しいと考えられるため、何を基準に選択していくかなどの指導は必要。

マッピング話し言葉や単語を、コンセプトマップやナレッジマップなどつながりや関係を可視化した図にまとめること。パス分析みたいなものができたりできなかったりする。可視化って大事よほんと、見ただけで分かるようにするっていう多大な工夫が必要だし。マップを作るうえで、作り方を熟知していなかったり、作る手間が多くてやめたりすることがある。これはHTML教材などテンプレートを設けてやるのがいいかも。

描写。学習内容を描写する非言語的要素の作成などが挙げられる。ノートの端っこに落書き感覚でちょこっと書いたおふざけ絵、あれが利く、というかあれだけ覚えているなんてこともあるだろう、それだよ。「特に描写に過剰な労力をかけない限り」これらは学習効果を発揮する。図示を支持したいのなら実際の描写を見せるなど具体的に指示し、余白を盛大に設け、場合によっては基礎知識を何回か学んでから描写に入るのがおすすめ。

想像。心象描写の作成と発展。未完成でいい、もっとイメージを。ただ物理的描写を伴わないため、何を描写するかを定義しなければ"ばなな(思考作用が正常に機能せず動機ロストに近い状態で呆然としているさま)"で終わってしまう。またその性質上、事前知識がある人のほうがより効果的である、というより事前知識が必須になってくる。

自己テスト。学習内容のより実践的な状況に遭遇した時の問題解決などを指す。動機づけを学んで、ゲーミフィケーションを学んで、その次は実際にゲームをプレイして「ここがまさに学んだところ」を復習する、あるいはHabiticaをダウンロードして使い心地と経験した動機を記録するなど。知識の統合を推し進める。みんなが想像するようなテストというよりは、小論問題が近いかもしれない、より幅広な議題を設けて事前知識をもとに挑むような。学んだ内容の節目節目で行うのがいいのかもしれん。

自己説明。学習中に自分自身に教えるべき授業の内容を説明すること。乱雑になった頭の中を独り言を介して整理していくイメージ、そして整理の中で答えがわかり一人興奮するさまも含む。自分自身に対する説明なので、説明自体は最悪自分で理解できるものであればいい。メタ認知戦略の具体的な表出の1つといえる、この感覚がわからない人がこれを履修するのは結構難しい。

教示。自分が学んだ内容を他人に教える。自己説明との違いは「他者に教える」というプロセスが入ることで、他者にも通じるぐらいの一般性を説明に持たせる必要があること、そして他者からのフィードバックや議論を交えることができること。自己説明が難しい場合は、他者と共同で教え、教えられのほうが効率がいいかもしれない。

その他物理的表出ジェスチャーや実物を用いた説明。非言語的な描写を介するため認知負荷理論[167]的にも優しい、文章の理解が捗る。また上記の心象描写や図示、自己説明においても有効な手段である、慣れないうちは併用するのが好ましい。ただしイメージが実物の出来に引っ張られる可能性がある。なお、ジェスチャーや実物を判別できるだけの事前知識は必要となる。

 

今回上げた戦略は0点を30点にすることは難しいが、30点から70点や90店に引き上げることを可能にする戦略ばかりである。すべての方略に事前知識の優位性が目立つため、きっかけさえ得られない例外にこの戦略が当てはまるかは不明だが、そうでない大多数にとっては有用に使えることが実証されている。要約については古くからその有用性が認められているから、これを試すのは全然ありだと思うです。

 

 

参考文献

Fiorella, L., Mayer, R.E. Eight Ways to Promote Generative Learning. Educ Psychol Rev 28, 717–741 (2016). https://doi.org/10.1007/s10648-015-9348-9