「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{77}岡田 涼, 中谷 素之 (2006)

動機付けスタイルの特徴を記述、またスタイルによる統制的刺激の効果の差を実験的に求める。

 

動機付けスタイル(Hayamizu 1997)→複数の動機付けから個人の動機付けの在り方を記述すること。

 

研究1、調査。4つの動機付けスタイルが顕在。同一化的・内的・取入れ的調整の傾向が強い「高動機付けスタイル」、内的・同一化的調整の傾向が強い「自律スタイル」、取入れ的・外的調整の傾向が強い「取り入れ・外的スタイル」、すべての動機付けスコアが低い「低動機付けスタイル」。

 

研究2、パズル課題を用いた実験。内発的動機付けの表出を興味と仮定、また不安や脅迫感も計測。2(統制的刺激/非統制的刺激)×4(動機付けスタイル)を独立変数、興味や課題回答数を従属変数と置く。

結果。非統制的条件において、高動機付けスタイルは取り入れ・外的スタイルより興味得点が高かった。高動機付けスタイルは統制の影響をモロに食らう、統制の2条件間で興味点数に差があり、統制条件のほうが低かった。不安点数は高動機付けスタイルと取り入れ・外的スタイルが比較的高かった。課題回答数は高動機付けスタイルと低動機付けスタイルが比較的高得点だった。

高動機付けスタイルと取り入れ・外的スタイルの差が目立つ研究結果。「取り入れ」は不安や自身による圧迫が動機となっているため、興味点数が低いものになったと思われる。「高動機」も不安、特に自我関与とされるものを抱えていると推測。ただ高動機は内的調整も含んでいるため、不安を知覚する状況を挑戦的な状況として処理できたのではと推測。

 

大学生335名(男164名)を対象としたときの動機付けスタイルの分布について、高動機付けスタイルが圧倒的に多い(145名)。これは、個人が常日頃から複数の動機付けを抱えていることを示唆する結果である。他のスタイルは似たり寄ったりな人数、「自律」66名、「取り入れ」69名、「低動機」55名。大半の人は、取り入れ的から内的調整までを抱えており、統制的条件といった環境などにより動機付けの強度が変動していくのだろう。

だから、外的指標で一喜一憂する自分を客観視して「相対的自律性が低い」と短絡的に決めつける必要はない。

 

大学生以外のサンプルで試したらどうなるのだろう、例えば前思春期とか。内在化は年齢がすすむごとに上手になっていくという自己決定理論[76][38]の仮説に則れば、前思春期のサンプルは外的指標とうまく接することができると考えられる高動機付けスタイルが少なく、自律動機付けや取り入れ・外的動機付けに偏るのでは。

あと高動機付けスタイルと取り入れ・外的スタイルの、精神病理の観点からの差異は同なのだろう。後者のほうが不適応っぽいし、差が出るのでは?

(日常的な)心理的欲求の充足(PENSとか)と動機付けスタイルとの関係は? 基本的心理欲求理論や因果志向性理論に則れば、欲求充足が多い順に「自律」>「高動機」>「取り入れ」>「低動機」となるのでは? あと因果志向性理論との関連性は?

 

参考文献

岡田 涼, 中谷 素之. 動機づけスタイルが課題への興味に及ぼす影響, 教育心理学研究, 2006, 54 巻, 1 号, p. 1-11