「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{208}Maria Theobald. 2021

大学生に対する自己調整学習の効力についてメタアナリシスしたもの。

 

自己調整学習(SRL)は準備段階・実行段階・評価段階の3つのサブプロセスを包含する概念であり(Panadero, 2017)、また取る戦略も認知戦略・メタ認知戦略・資源管理戦略の3つに大別される。認知戦略はリハーサルやエラボレーション、組織化など情報処理において優位に立とうとする戦略であり、既存の知識との統合に役立つ。メタ認知戦略は認知戦略の使用を監視し、これが有意に働いているかを確かめるもの、目標設定やモニタリングなどがあたる。資源管理とは内的資源と外的資源の管理を意味し、学習に内的資源を回せるように、外的資源に気が散らないようにするために制御するもの。

 

手続き。PRISMA君。検索式は以下。

abstract:("intervention" OR "training" OR "treatment" OR "foster*") AND abstract:("university" OR "college" OR "undergraduate" OR "undergraduate" OR "graduate" OR "graduates" OR "high* education" OR "post-secondary education") AND abstract:("study skills" OR "learning strategies" OR "self-regulatory strategies" OR "self-regulatory skill" OR "metacognitive skills" OR "metacognitive strategies" OR "time management" OR "resource strategies" OR "self-regulated learlls" OR "self-motivation" OR "study stood stood" OR "learning style" OR "cognitive strategies")

検索条件は英語文献およびドイツ語文献、出版済み文献・未出版文献・(オンラインデータベースで追跡可能な)灰色文献を対象とした。

SRLを題材とした直接的な介入を対象とした。また在学の大学生が研究対象であること。サンプルは最小10人。実験・準実験的な事前・事後テストの比較を用いた研究の実を対象。以下は細かい選別手順。変数として、学業成績・認知戦略・メタ認知戦略・資源管理戦略・動機のアウトカムについて明記されていること。最終的に49の論文が調査対象となった。

 

結果。大学生を対象としたSRLトレーニングの平均効力は少から中程度である、academic performance(g = .37), cognitive strategies (g = .32), metacognitive strategies (g = .40), resource managementstrategies (g = .39), and motivational outcomes (g = .35) (Cohen, 1992)。

学業成績への効力は少中学生のそれよりかは比較的小さいが、それでも有意に働いている。また、GPAとの相関はこれより比較的小さくなり、これはGPAが長期的な学習成果を反映しているためと考えられる。

メタ認知戦略の指導について、認知戦略をいつ、どのように、そしてなぜ適応するのかを教えれば特に効果的であることが示唆された。メタ認知的考察を含むトレーニング方法は、これを含まないトレーニング方法よりも比較的好成績であった。

認知戦略の効果は比較的小さい。大学生ともなると自分なりの学習方法を(まがいなりにも)確立しており、新たに提示しても棄却される選択肢として在ると考えられる。これへの対処として、より広範な認知戦略を提示し、自身のそれと統合しやすいものを選択してもらうことが考えられる。

資源管理戦略について。目標を設定し、計画を立て、進捗を監視し、振り返る。動機づけや時間、学習環境を統制する方法は、進捗を監視し自己申告するものよりも比較的効力が低く、これは前者の手法が学生にとって困難なものであることの示唆として受け取る。

協調的な学習の場合、認知戦略とメタ認知戦略の効力が大きくなる、つまりその戦略により値がより揺さぶられる。目標設定や計画などメタ認知戦略の施行が困難な学生は、学習時間を友人と共有し、またフィードバックを得るという方法が効果的である。

教師からのフィードバックはメタ認知戦略と資源管理戦略の効力を大きくした。学生自身が行うフィードバックも計画や目標の見直しに役立つ。自省の支援という意味で、フィードバックは多いに機能する。

生徒自身による資源管理戦略、特に学習プロトコルは学生の時間管理に有利である。自分の学習時間ぐらい自分で決めたいものである。また、成績不振者は時間管理や研究管理の難しさを頻繁に訴える傾向にある(Balduf, 2009)。この傾向は時間管理のためのメタ認知能力が発達途上なのか、はたまた外因環境的に時間が不足しているのか、おそらくどちらも影響するのだろう。

共通して、メタ認知戦略、つまり「それは真に効果的であるか」を自身に問う自省的行為の向上につながり、これが成績へ影響する。違う論理を持ち出すが、効果的であるかどうかもわからず闇雲に進めても有能感の充足はなされない、真に効果的であるかどうかを振り返り、フィードバックを得るのが効果的であるのは驚くことではない。

メタ認知戦略による自省的行為が功を奏すか、SRLにより学生の自己効力感が増加した。先ほどの理屈はあながち間違いではないのかもしれない。

 

 

参考文献

Maria Theobald. Self-regulated learning training programs enhance university students’ academic performance, self-regulated learning strategies, and motivation: A meta-analysis. Contemporary Educational Psychology, Volume 66, 2021, 101976, ISSN 0361-476X, https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2021.101976. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0361476X21000357)