「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{205}Daniel Johnson et al. 2021

ビデオゲームにおける援助行為と欲求・情熱の媒介効果について調査したもの。

 

SDTと二重主義モデル(Dualistic Model of Passion)。後者は調和的/脅迫的な情熱について論じたもの。差分は他の活動に対する当たりであり、調和的は他の事象とも折り合いをつけて接し、脅迫的は他の事象を蔑ろにし「自分にはこれしかない」と思い込むさまを指す。

援助行為について、向社会的行為と利他的行為があるが、本研究では区別されない。

共感-援助仮説(empathy-altruism hypothesis)に基づき、援助行為は心理的欲求→情熱→共感→援助のパスをたどると仮説。

 

手続き。オンライン調査。

15歳以上、過去1か月間にマルチプレイゲームのプレイ体験があることが参加条件。Facebook広告・大学の管理サイト・研究室システム・他オンライン広告にて宣伝、研究システムから参加した心理学徒には単位の報酬あり。報酬としてアマゾンギフト券抽選券。最終サンプル389名(平均22.37歳 男性66.3%)。

向社会的プレイ・利他的プレイを簡単に定義。向社会的/利他的プレイの頻度、共感性、情熱(Vallerand et al. 2003)、PENS[102]、年齢と性別。

パス分析。

 

結果。図を表示。

有意なパスは、心理的欲求から調和的情熱への正のパス、関係性欲求から共感への正のパス、関係性から脅迫的情熱への正のパス、共感に対する調和的情熱の正のパス・脅迫的情熱の負のパス、援助行為に対する共感・有能感・関係性からの直接の正のパス。

目立つのは関係性のパス。すべての従属に対し有意なパスを持つ。調和的な情熱が心理的欲求の充足から成立するのは分かるが、脅迫的な情熱が関係性にのみ有意な関係を持つと現れた。「私にはこれしかない」という思い込みとの関係? いづれにしろ、関係性は2つの情熱とかかわりがある心理的欲求であるという発見は、貢献である。

→自己顕示欲につながるのかな。あれも対他的な表出策だから、関係性の充足と関係しそう。情熱と自己顕示欲[191]の関係。

情熱からの直接のパスは有意ではなかったが、共感を介したパスは有意であった、共感-援助仮説と一致。

有能感と援助行為に直接のパス、まぁゲームプレイに自信があったらおのずと手を差し伸べてくるのは不思議ではない。有能感は調和的情熱のパスにもつながっている、「できた、やった」感はやはり有意だ。

 

 

参考文献

Daniel Johnson, Xiang Zhao, Katherine M. White, Varuni Wickramasinghe, Need satisfaction, passion, empathy and helping behaviour in videogame play, Computers in Human Behavior, Volume 122, 2021, 106817, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2021.106817. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563221001400)