「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{204}Ilana Dubovi 2022

感情の客観的表出・瞬き回数とエンゲージメントの関係を探ったもの。

 

イスラエル看護学部新入生65名(女性44名 平均23歳)対象、最終サンプル61名。

事前-事後比較。コンピュータによるアイトラッキングと表情の動作確認、その後VRベースのシミュレーションで40分前後学習、VRゴーグルではなく普通のディスプレイ。学習後事後テストを行う。

iMotion 9.0  (https://imotions.com) が提供するアルゴリズムで喜び・怒り・驚き・軽蔑・恐怖・悲しみ・嫌悪のリアルタイムデータを収集。また肯定的・否定的感情尺度(PANAS)の自己申告も用いた。

アイトラッキングでリアルタイム視線データ、初回固視までの時間・滞在時間の割合・固視回数・固視滞在時間。Shimmer3で皮膚反応のトラッキング。シミュレーション精度への問い。

薬物投与試験(MAT)を事前-事後比較。

 

結果。

表情差分の分析結果、喜びの感情の表出が有意に多いことが判明。またシミュレーション段階により変化し、導入とチュートリアルを終え実際の操作に入った段階において有意に喜びを経験した。PANASにおいてもポジティブ感情を有意に示した、こちらは時間経過による変化は見られなかった。

→導入でワクワクして、チュートリアルでちょっと下がって、実際に操作するときにまた楽しくなる。長ったらしいチュートリアルは避け、とりあえずやらせるの精神はここでも通用するか。

アイトラッキング等。瞬き回数とテスト成績は負の相関を示した、また実際の操作に入った段階で瞬き回数が有意に下がったEDA(皮膚反応)も同様の傾向を示した。集中する、つまり認知的関与が高い状態では瞬きは少なくなり、そうでないときは精神的に困難であるという解釈。また固視において、類似の選択肢が提示されたときに検討する時間が長い学生ほど、事後テストでの成績が低い傾向にある。

感情的関与と認知的関与に有意な相関がみられた、特に、1分間の瞬き回数と喜び・驚きに有意な正の相関がみられた。喜びの感情が認知的負荷となった、あるいは関与を引き起こした。

→「?」瞬き回数が多いのと成績は負の相関。喜びと驚きの感情は瞬き回数と正の相関。喜びや驚きは成績と直接関係しないが、自己申告の感情は成績に正の相関。瞬き回数は認知負荷の表出であり、喜びや驚きもその1つであると解釈。ただそうなると、同タイミングで感情の昂ぶりと瞬き回数の低下が起こったとする記述と、瞬き回数と感情の正の相関という記述に矛盾が生じる。

事前知識・自己申告の感情・怒りは事後テストの39%を説明し、1分間の瞬き回数と固視傾向は12%を説明、全体で51%を説明する。喜びの感情は特に影響を与えず、怒りの感情は負の影響を示した。また無関係な情報に視線が行く傾向も負の影響を与える

 

 

参考文献

Ilana Dubovi. Cognitive and emotional engagement while learning with VR: The perspective of multimodal methodology. Computers & Education, Volume 183, 2022, 104495, ISSN 0360-1315, https://doi.org/10.1016/j.compedu.2022.104495. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0360131522000665)