{115}Andrew K. Przybylski, et al. (2009)
日々の欲求充足の情熱を介したゲームプレイへの影響を調査したもの。
情熱の二元論的モデル(Vallerand et al. 2008)を採用。完全な内面化がもたらす調和的な情熱と、不完全な内面化がもたらす強迫的な情熱が、ゲームプレイの楽しさにどう作用するのか。また内面化の度合いと心理的欲求の充足の関係にも着目する。
n=1324(Male=1168, 平均24.01歳)対象。ゲームの種類、欲求充足、情熱、ゲームの楽しさ、緊張と活力、生活満足度、精神衛生、身体的健康、を調査。
結果。欲求充足の高さはゲームプレイの調和的な情熱と正の相関を持ち、充足の低さはゲームプレイの強迫的な情熱と正の相関を持つ。調和的な情熱はゲームの楽しさを正に予測し、脅迫的な情熱はプレイ時間の多さ・プレイ時の緊張・楽しさの少なさと関係した。身体的健康・生活満足度・精神衛生はゲームに対する情熱を予測したが、欲求充足をコントロールした場合、項目が占める分散は1~2%ほどになる。ゲームプレイ時間に伴う楽しさは、調和的な情熱は正に、脅迫的な情熱は負に増加した。
これらの結果は、日々の欲求充足が健全なゲームプレイに繋がり、充足機会の少なさは脅迫的なゲームプレイに繋がることを示唆している。日々の欲求不満がIGDの重症化につながるとする研究{28}や、インターネット利用障害のきっかけが特異な精神衛生の崩れに由来するとするI-PACEモデル{60}と一致する。
参考文献
Andrew K. Przybylski, Netta Weinstein, Richard M. Ryan, and C. Scott Rigby. Having to versus Wanting to Play: Background and Consequences of Harmonious versus Obsessive Engagement in Video Games. CyberPsychology & Behavior.Oct 2009.485-492. http://doi.org/10.1089/cpb.2009.0083