「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{17}Nannan Xi, Juho Hamari. (2019)

ゲーミフィケーションが本当に心理的欲求を充足しているかを調査したもの。

 

ゲーミフィケーション心理的欲求の充足を介して好影響をもたらす、という暗黙の前提みたいなものがあるが、この前提の真偽を確かめた研究は少ない。大体の研究はゲーミフィケーションと成績・エンゲージメントの相関を測る研究であり、半分は理論的基盤が設けられてないなんて言われているから、もう驚きもしない。今回はゲーミフィケーションを3タイプ(没入・達成・社会)に分け、それぞれがどのようにSDT[76]の心理的欲求を満たしているかを検証する。

XiaomiとHuaweiゲーミフィケーションを採用したコミュニティを対象。n=824(fe= 48.2%)、20~39歳が80%。コミュニティのゲーミフィケーション機能を独立変数、心理的欲求を従属変数、週当たりの利用時間と利用年月を統制対象の変数として収集。

没入要素はアバター、パーソナライズド機能、ストーリー。達成要素はバッジ、メダル、トロフィー、ポイント、スコア、EXP、レベル、リーダーボード、難易度。社会要素はチーム、マルチプレイ(協働・競争)、SNS機能。

結果。没入要素は自律性欲求充足と、達成要素と社会要素はすべての欲求充足と正の相関を持つ。最も影響力が強いのは達成要素からのパスだが、その関係は強いとは言い切れない(β= 0.4以下)。週当たりの利用時間と利用年月がこのパスに影響を与えることはなかった。

没入要素が自律性欲求充足のみ有意な関係を持った理由について、社会的相互作用が重んじられるオンラインコミュニティが舞台であることが挙げられる。自律性と関連性はその両義性が示唆されている[4]、その延長線上だろうか。

ゲーミフィケーションの単一の要素が具体的になにをもたらしているか、利用者の嗜好を踏まえた分析は、ゲーミフィケーション心理的欲求→利用状況へのパスはどういったものか、オンラインコミュニティ以外での効力はどのようなものか(特に、強制の環境にある時のふるまい)。これらは今後のリサーチクエスチョンである。

少なくとも、ゲーミフィケーション要素が心理的欲求を充足していることが示唆された

 

 

参考文献

Nannan Xi, Juho Hamari. Does gamification satisfy needs? A study on the relationship between gamification features and intrinsic need satisfaction. International Journal of Information Management, Volume 46, 2019, Pages 210-221, ISSN 0268-4012,