「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{149}Kuan-Chung Chen, Syh-Jong Jang. (2010)

オンライン学習における動機付けのSDT的説明のための調査。

 

資格取得のためのオンライン授業参加者n=262(平均37.80歳 女性78.1%)対象。

完全オンラインコースライブチャットシステム、Officeソフト、Adobeソフトなどを活用。コンテンツを読み、クイズを完了し、ディスカッションに参加。オンライン課題も存在し、夏学期終了時に最終プロジェクト完遂が求められた。教員は議論指導・質疑応答・チャット議論などを行う。トラブルシューティング用職員待機。24時間常にサポート回答を得ることができた。

自己申告の質問票を回答。人口統計学的要素。自律性支援(Williams & Deci 1996)、独自で作成したコンピテンシーサポート尺度(→論文では2つをまとめて支援的文脈としている、ブログ内では自律性支援で統一)。自律性(Standage et al. 2005)、関係性(South 2006)、有能感(McAuley et al. 1989)、Academic Motivation Scale(Vallerand et al. 1992)で動機付け算出したのちRAI採用、点数合算。学習に週何時間従事したか、サイトへのアクセス回数、学力、学力への主観的期待、学習満足度(Hao 2004)。

 

結果。自律性支援は欲求充足を介し週あたりの従事時間を正に予測、自律性支援からの直接のパスは有意ではなかった。自律性支援は欲求充足を介し学習サイトへのアクセス回数を正に予測、自律性支援からのパスは負に予測した。欲求充足から主観的期待へのパスは正の予測だったが有意ではなかった。欲求充足から最終成績のパスは有意ではなかった。欲求充足からPerceived Learning へのパスは正の予測だが有意ではない。自律性支援の文脈は学習満足度を直接的に予測した。欲求充足は動機付けに正の予測だが弱く、また動機付けから全ての従属変数へのパスは有意ではなかった。

 

パスが有意じゃないの多分RAIでひとまとめにしているから。動機付けの性質上、外的調整以前と取り入れ的調整以後でかなり違う、根幹となる有能感の充足から分たれている。そこのスコアを一緒くたにしちゃったから結果が出なかったと思われる。動機付けスタイルのように動機付けの志向性を因子分析して抽出して、グループごとに関連性があるかを調べるべきだった。

自律性支援の効力は主に勉学への従事の抵抗感を減らすこと。これ自体は短期的な効力を発生させない(成績はその人の能力に大きく左右されるから)が、長期的な生き様を正の方向にするとされている。また成績に有意な効力が現れなかったのは学生全員が好成績な傾向にあったためとも考えられる、天井のそれに近い。

自律性支援そのものが有意なパスを持つことは少なかった。これは的外れな支援は逆効果であることを示唆している。生徒のツボを把握してなかったり、熱意が空振りしていたり、その熱意によって生徒を突き放したり。自律性支援は生徒の意思を生かすための処置であり、ひたすらに教員が正のエネルギーを振り撒けばいいというわけではない。

 



参考文献

Kuan-Chung Chen, Syh-Jong Jang. Motivation in online learning: Testing a model of self-determination theory. Computers in Human Behavior, Volume 26, Issue 4, 2010, Pages 741-752, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2010.01.011.