「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{202}Shurui Bai, et al. 2020

ゲーミフィケーションが学業成績に与える影響をレビューしたもの。

 

ブール演算子。検索式は以下。:gamif* AND (education OR class OR course OR learning 
OR performance OR behavior OR outcomes OR evaluation OR impacts OR effects OR influence).PRISMA。選別の詳細は以下。

質的研究32、量的研究24がレビュー対象となった。

効果量の差。最初のモデレータ分析はゲーム要素の内容と量、第2は対照群と実験群の差、第3は教科・介入期間・サイズ・反転授業の実施・報酬の有無、第4はどの段階の教育課程か。

出版バイアス。

 

結果。

使用されたゲーム要素について。バッジ・リーダーボード・ポイントの採用率が圧倒的。もう何も言うまい[198]。なお、導入したゲーム要素とその数は有意差に影響しない。むやみやたらに導入しても追加のバフはもらえない。

全体的な効果量について。3202人の参加者を含む30の独立した介入が行われた結果、ゲーミフィケーションによる学業への正の効果は有意に確認された。効力としては中程度(Hedges’ g = 0.504, 95% CI [0.284–0.723], p < 0.001)である。

出版バイアスについては有意ではない。

研究対象となる学習分野・反転授業・指導内容(個人or集団)・有形報酬による有意差は見られなかった。ただし、サンプルサイズと介入期間は有意差に影響し、これはそれぞれ、サンプルサイズは小さいほど、介入期間は短いほど、効力が高いと示された。

→原因。サンプルサイズが小さい場合、帰ってくる値も大きくなる(ばらつきに左右されやすくなる)ことが1つある。介入期間が短い場合、新規性効果によるごり押しがまかり通っている可能性がある、具体的には1か月~3か月の介入では大きい効果量を持つが(g=.906)、一学期以上の期間を持つ介入は効果量がぐっと下がる(g=.392)。

質的研究の傾向。ゲーミフィケーションを好く人による評価は主に、ゲーミフィケーションが動機を作る、目標設定を促進する、質のいいフィードバックを提供してくれる、学習者の心理的欲求を満たす、の4つ。これを嫌う人の評価は主に、付加的な効力をもたらさない(つまり、余計なものとしてみなしている)、これが不安や嫉妬を引き起こす、の2つ。

→このことから、ゲーミフィケーションが効力を発揮した理由として、フィードバックの提供・目標設定・心理的欲求の充足の3つが考えられる。

嫌う人の評価を掘り下げる。前者はバッジやポイントなどの報酬がまるで子供だましのように受け取られたようなイメージで、より具体的な報酬(おそらく成績に直結するようなもの)であれば有効であると助言している。後者の代表例として「リーダーボードで上位に食い込めなかった人による不満」が挙げられる、つまり競争の副作用、導入したゲーム要素が嫉妬を発生させる要因にすり替わった結果である。

 

有形報酬について。具体的には、ゲーミフィケーションアプリ内での活動が成績につながらないことを理由に動機を喪失する例が絶えない、など。ポイント要素として実際の有形報酬や成績評価と交換する試みはなされており、一定量の効果はあるという。

リーダーボード、競争要素の活用について。「勝てないこと」「負けていること」の明記が動機の喪失となるのはしばしば言及されている。基本的には競争要素は強い動機として機能するが、裏返しも存在する。これへの対処として、同程度の実力の少数グループを作成しそのグループ内での順位を表示する、下位の成績を明記しない、などが考えられている。

 

 

参考文献

Shurui Bai, Khe Foon Hew, Biyun Huang. Does gamification improve student learning outcome? Evidence from a meta-analysis and synthesis of qualitative data in educational contexts. Educational Research Review, Volume 30, 2020, 100322, ISSN 1747-938X, https://doi.org/10.1016/j.edurev.2020.100322. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1747938X19302908)