「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{161}Dichev, C., Dicheva, D. (2017)

教育目的のゲーミフィケーションの効力をメタアナリシスしたもの。

 

以下の検索ワードを打ち込む (gamification OR gamify OR gameful) AND (education OR learning OR training) AND (since 2014)。選別基準は、ゲーミフィケーションの定義としようが明確に記されていること、レビューがついていない査読付き実証研究は除外、Dicheva et al. (2015)でレビューした論文は除外、2014年6月30日~2015年12月31日の間に掲載されたもの。結果、51件が対象となった。

理論論文、ゲーミフィケーションの性質を延々説明したり、関連する教育法を提案したりするやつ、本ブログの"理論"タブに該当する論文も対象とした。結果、11件の理論論文が対象となった。

 

ゲーミフィケーション研究の大半は大学レベルで行われn=44、高校以下を対象とした研究は少なかったn=7。

基本的には学術科目を対象としているn=32、その他はゲーム要素の分析・個人学習環境・性格特性などが含まれる。

研究の39%n=20はコンピュータと情報技術を用いている。

学習形式は、講義・課題・演習・ディスカッションなど多様。大半の研究n=36は、特定の学習活動に対するゲーミフィケーションの効果を対象としている。

ゲーム要素を1つ導入した研究は11件、2つ導入したのは8件、3つ導入した研究が16件、3つ以上は16件。複数の要素を引用するのは構わないが、独立した効力は果たして計れているのだろうか?

よく用いられているゲーム要素はいつものやつ。ポイント・バッジ・リーダーボード。報酬型ゲーミフィケーションと揶揄されるようなもの以外の、没入など深い学習を喚起するゲーム要素を組み込んだものは少数派である。

 

探求された効果は大きく分けて、知識獲得効果・知覚的効果・行動的効果・関与効果・動機づけ効果・社会的効果、の6つ。こういうのでよく見る分類は行動・感情・認知の3つ。

動機づけ効果を検証すると主張した論文が学習効果を結果として提示することが時々見られる。

ゲーミフィケーションの実証研究はサンプルや手続きの文脈が限定的であり、この観点から一般化が難しいとも。

先行研究の拡張と差別化を目標とした論文が大半でありn=44、記載された目標と異なる結果を得ることもある。

よく提示される疑問文は「ゲーミフィケーションは効果的か?」というもの。また、ゲーム要素は誰にとって効果的かを計った研究は、少ないが存在する。

 

有用な証拠が主張を裏付けたときを肯定、証拠がその否定を裏付けたときを否定、サンプルサイズが小さい・比較群がない(準実験スタイル)・実験時間が短い・単純な統計のみを用いている・統計的証拠の有意性が小さいとしたときを不明と分類する。41件の実証研究のうち、15件が肯定、26件が不明を示した。肯定のうち、ポジティブ効果が12件、ネガティブ効果が3件となった。

また、今あげた肯定のポジティブ効果も"独立した効力が曖昧"という上記で記した問題が発現するため、効力の一般化は慎重になるべきである。

そして、研究の大半には理論的背景が添えられていない。

ゲーミフィケーションが、信頼尾性が高く有効で長期的な効力を生み出す、従来の教育とは画一した手法である、とは言い難い。

 

ゲーミフィケーションの実践がメカニズムを把握しているはずの研究者の理解を上回ったこと、効力を担保する質の高い証拠が不十分であること、ゲーミフィケーションの活用とその理解が限定的であること。

 

 

参考文献

Dichev, C., Dicheva, D. Gamifying education: what is known, what is believed and what remains uncertain: a critical review. Int J Educ Technol High Educ 14, 9 (2017). https://doi.org/10.1186/s41239-017-0042-5