「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{203}Halverson, Lisa R., and Charles R. Graham. 2019

ブレンデットラーニングにおけるエンゲージメントの定義をレビューも踏まえ提案したもの。

 

認知的・感情的関与に絞る。この2項目は他のエンゲージメントを対象とした研究にて頻繁に取り上げられ、また学習成果に影響を与えることが主な理由である。

以上は認知的関与の詳細。認知的関与は量的性質と質的性質に大別できる。

注意(Attention)。限られた認知資源の分配先を考慮するもの。アイトラッキングなど何にどれぐらい注意を配っているかで推測可能。学習者がどれだけ学習に打ち込んでいるかを計る一般的な指標。

効果の持続性(Effort & Presistence)。タスクにかかる時間、もっと言えば、タスクに注力した時間を指す。タスク消化時間≠タスク熱中時間ではない。タスクに対する有意な関与がどれだけ続いたかを示す。

時間(Time on task)。こちらは純粋にタスク完了までの時間を指す。この概念は難易度の効果を媒介する。つまり、難しすぎたり柔らかすぎたりして、時間が極端に長いor短いことは離脱を予測する。

メタ認知戦略(Metacog Strategies)。深い学習・浅い学習の使い分け。どれだけ関与しているかはどういったメタ認知方略を用いているかにかなりかかわってくる。

集中力または吸収力(Absorption)。おそらくフロー状態を想定している。

好奇心(Curiosity)。特に個人的興味を指す。蓄積された学習による好奇心は関与に影響を与える。

 

以上は感情的関与の図解である。感情的関与はポジティブなものとネガティブなもので別れる。

ポジティブな感情は行動・注意・認知の範囲を広げ、学習者が「関連性と相互関連性を見ることで」統合的な教材処理を促す。つまり学習の際の感情的抵抗感をなくす。ネガティブな感情は退屈・疎外感情・圧力の複合的な存在である。

状況的興味もしくは楽しさ(Enjoyment)。外部刺激によって発生する短期的な感情。火種としては優秀である。退屈さと離脱に明確な相関はないらしいが、しかし無視はできないだろう。

幸福感(Happiness)。特に学習課題への関与における瞬間的状態。問題解決の際の報酬もしくは燃料として機能するとされる。

自己肯定感(Confidence)。自身の能力や事実に対する自信。不安と負の相関。自己肯定感は関与を促進し、また関与により発生するものでもある。

退屈(Boredom)。関心の欠如による倦怠感もしくは注意の散漫。退屈は動機づけを損ない表面的な学習を促進することで学習に負の影響を与える。退屈は最も生産性の低い状態であり、割合こそ少ないが(コンピューターベースの学習の際に退屈な時間が5%ほど発生する)、退屈の定着は負の効力をもたらす。

フラストレーション(Frustration)。疎外感情。「困難な材料に遭遇した時に学習体験の自然で避けられない部分かもしれない、肯定的な学習体験の副産物」、つまりどうにかしようとやきもきしているときに発生する感情であり、慢性化は避けたいが、単体で退屈ほど悪化させるものではない。

→類似に混乱の感情がある。これは自己肯定感や好奇心と重なると正の、退屈やフラストレーションとかみ合うと負の効力をもたらす。「わかんないけどわかりたい」「わかんないからつまらない」の差である。

不安(Anxiety)。特に「タスク外的な対象を持ち、タスクと無関係な思考を生み出す」不安が学習に負の影響を与える、「こうなってしまったらどうしよう」という空想にとらわれてしまうことを指しているのだろう。複雑な学習場面において、不安はメモリ圧迫につながる。

 

 

参考文献

Halverson, Lisa R., and Charles R. Graham. "Learner Engagement in Blended Learning Environments: A Conceptual Framework." Online Learning Journal [OLJ], vol. 23, no. 2, June 2019, pp. 145+. Gale Academic OneFile, link.gale.com/apps/doc/A593147939/AONE?u=anon~9f29f936&sid=googleScholar&xid=c8295531. Accessed 16 Nov. 2023.