{21}Karra, S., Karampa, V., Paraskeva, F. (2019)
SDTの理論的背景にしたゲーミフィケーションを用いた、研修生用のアプリの提案。
SDTに基づく教育シナリオを設計し研修生のモチベを上げることができるのか、またそのためにMoodleをどう改造すればいいかを議題とした。
"The Lord of the Ring"をテーマに用いる。Lord卿がHobbitonに属する人のコミュニケーションスキルをはく奪したから、それを取り返せ、みたいな道筋。
学習コースは5段階に分かれており、それぞれ4つのステップを内包している。
ステージ1:Hobbiton。チュートリアルステージ。学習目標やシラバスの詳細の説明、Moodleの環境設定やアバター作成を行う。推定1日。
ステージ2:Rohan。研修生が顧客サービスの良い/悪いという概念に対処する。学習目標について情報を得た後、ブレインストーミングによって効率的なサービスの特徴を定義。またケーススタディも重ねる。正しい答えに対して肯定的なフィードバックがなされ、最後にクイズを通して知識をテストする。推定3日。
ステージ3:Godor。効果的な顧客管理の概念について学ぶ。Think-Pair-Shareの共同作業手法に関する情報を得たのち、研修生の意思にてペアが組まれ、共同でケーススタディ活動が行われる。ペア相手による評価と自己評価の両方にて判断。推定3日。
ステージ4:Mordor。効果的な顧客からの苦情処理の概念について学ぶ。やり方はステージ3と同じ。また、これまでの学習内容に基づいて行動・評価しなければならず、80%の祭典制限を克服する必要がある。推定3日。
ステージ5:Mountain Doom。コース修了の認定試験、またその達成度を視覚化したフィードバックを受け取る。
組み込んだ要素。
アバター:プロフィールに画像のアップロードができる。自由な選択の提供として、自律性をカバー。またタスク成績と自身を紐づける要因にもなる。
プログレスバー:行うべき活動・完了した活動・完了していない活動について情報を得ることができた。有能感と自律性。
リーダーボード:クイズの成績を一覧に表示させる。競争の喚起、またはペア間の相互作用を促し、関係性を深める。ただし、勝敗により効力が異なる。
レベル:自身のレベルと次のレベルへの進捗を表示する。この項目もフィードバックとして機能する。有能感。
フィードバック:課題やクイズの結果の可視化。有能感。
バッジ:ユーザーの業績に対する報酬。プロフィールにつけることもできる。獲得は有能感、開示は関係性。
ランキング:リーダーボード。
顧客とのコミュニケーション経験のない16名の成人研修生を対象。施行後、すべてのSDT構成要素について高い得点を獲得した。事前事後の比較すらないので、おまけ程度。
レベル・リーダーボード・バッジ要素が組まれているのであれば、自由課題を設け、プレイヤーの意思によりレベルの向上を狙えるようにすればより自律性得点を獲得できそう。また誇示にもバリエーションが発生し関係性にも有意な効力が発生するかもしれない。ただし、外発的動機付け的な行動、つまりバッジの獲得やレベル上げを目標とした個人の発生が考えられる。
ロードオブザリングという聞きなじみのあるタイトルの採用は、自己決定理論では説明できないが、動機づけにかかわる要素でもある。ただ、そうした効力はこなす課題との乖離が生じている場合、無効となる。ストーリーはこなす課題と調和して初めて発揮される。
また、反省的思考Reflective thoughtの項目にばらつきがみられる。これは個人差により決定されていることを示し、項目に対する介入がなされていないことを示唆している。
実証研究がないに等しいため、これ以上の考察は不可。続報を待つ。
参考文献
Karra, S., Karampa, V., Paraskeva, F. (2019). Gamification Design Framework Based on Self Determination Theory for Adult Motivation. In: Uden, L., Liberona, D., Sanchez, G., Rodríguez-González, S. (eds) Learning Technology for Education Challenges. LTEC 2019. Communications in Computer and Information Science, vol 1011. Springer, Cham. https://doi-org.libproxy.ouj.ac.jp/10.1007/978-3-030-20798-4_7