「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{157}Daniel Johnson, Sebastian Deterding, et al. (2016)

健康推進アプリに導入されたゲーミフィケーションの効力を確かめるためのレビュー。

 

手続き。Gamif* AND (health OR mental OR anxi* OR depres* OR wellbeing
OR well-being).のワードで検索。包含基準を、査読付き・全文公開・実験研究・手続きを詳細に説明している・ゲーミフィケーションを研究対象として明示・導入したゲーミフィケーション要素を明記・効力または対照群との比較あり・健康や福祉に関連するものだと明記している、に設定。

Connolly et al. (2012)提示の論文の品質評価方法を用いた。手続きがどれぐらい精密か→無作為抽出かつ対照群あり/準実験スタイル/一事例的・分析方法はどの程度適切か・サンプルサイズなどから一般化の程度・人口統計学的要素の考慮・研究の焦点はブレていないか・研究結果はどの程度研究課題を解消できるか。これらの項目をもとに採点。対照群の有無に比重がある。

媒体をモバイル・ウェブサイト・アプリ・アナログ・特注危機に分類。効果測定を感情・行動・認知に分類。

 

結果。検索により、365件がヒット。重複を排除し221件が残る。うち包含基準を満たした19件を評価対象とする。

論文の品質は8つが弱く、3つが中程度、8つが強い。平均得点は10.3点、最頻値は10.5点。Connolly et al. (2012)がシリアスゲームの実証的研究を分析した結果は平均8.56点、最頻値9点だった。大半の研究(n=10)において対照群との比較がなされていない

モバイルアプリ(n=7)とウェブサイト(n=6)が主な採用形態である。合計46のゲーミフィケーションが用いられ、最頻はバッジであり(n=16)、次いでリーダーボード(n=6)、アバター(n=6)である。調査方法は自己申告アンケート・面接・日記・ビデオ・機器による計測など多様であった。

ゲーミフィケーションの効力は、ポジティブなものが多数であり(n=22 59%)、次いで中立または混合の結果(n=15 41%)が報告され、純粋に否定的な効果は報告されていない。

効果測定の基準は行動(n=19 51%)または認知(n=17 46%)によるものであり、感情はほとんど評価されなかった(n=1 3%)。

 

他のゲーミフィケーション研究と比べたとき、若干、健康主題の研究はエビデンスの質が高いと思われるがサンプルが少なすぎてこれ以上のことは言えない。というか半数に近い研究が対照群なしという事実。

ゲーミフィケーションによる効力は自律性支援のようなOIT的な効力であり、内発的動機付けの強化とはいいがたい。これは報酬型ゲーミフィケーションの話につながる{45}。レビュー対象のうち18件が複数の要素を用いているため効力の内訳は特定不可だが、少なくとも報酬による効力は認められている。ポイント・バッジ・リーダーボードだよいつものだよ{104}{93}。

動機付け理論を理論的背景として明示した研究は少数派であり(n=8)、主に用いられたのは自己決定理論であった。

 

 

参考文献

Daniel Johnson, Sebastian Deterding, Kerri-Ann Kuhn, Aleksandra Staneva, Stoyan Stoyanov, Leanne Hides. Gamification for health and wellbeing: A systematic review of the literature. Internet Interventions, Volume 6, 2016, Pages 89-106, ISSN 2214-7829, https://doi.org/10.1016/j.invent.2016.10.002. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214782916300380)