「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{25}Hong, H.J., Wilkinson, G. & Rocha, C.M. (2023)

勧告のeSportsプレイヤーを対象とした、心理的欲求充足・内発的動機付け・燃え尽き症候群の関係を調査したもの。

 

余暇活動としてeSportsに勤しむ韓国人サンプルn=608(男性43.3% 平均23.1歳)対象。プレイしているゲームはPUBGが16.3%、LoLが13.5%。サンプルは週平均6.81時間(SD=13.2)プレイしていた。

自己申告式。Deci et al. (2001)より、自律性7項目、関連性8項目、有能感6項目、7段階リッカート。燃え尽き症候群はRaedeke and Smith (2001)より疲労度5項目、達成感5項目。動機づけはLonsdale et al. (2008)のBRSQを参照、7段階。またLonsdale et al. (2009)に従い自律的動機づけ指数を算出、これはOITで述べられる4つの調整と内発的動機付けのスコアを加重して算出される、-2*外的+-2*取入れ的+1*同一化的+1*統合的+2*内発的。人口統計学的要素。

英語アンケートを韓国語訳して用いた。

確証的因子分析CFAとSEMを用いたモデル分析。すべてのアンケート項目において一定の因子負荷量が見られた。

 

結果。まず、韓国人プレイヤーは平均して心理的欲求の得点が低かった。自律性M=3.88; SD=1.36、関係性M=4.06; SD=1.44、有能感M=3.57; SD=1.55、リッカート尺度は最大7点。

そして、自律的動機づけは有能感充足のみが負の相関を示し、自律性と関係性は有意な相関を持たなかった。自律的動機付けは疲労感と達成感低下と負の相関を示し、有能感充足-動機づけ低下-疲労と達成感低下のパスは有意だった。

 

どういうわけか、有能感という、その充足が動機づけの基盤として機能することが示されているものが、動機づけに負の相関を示し、疲労感へのパスを持っている

自律的動機付けとして集約させず、それぞれの欲求が4つの調整と内発的動機付けにどうかかわっているかを算出し、そのパスを求めだしたほうが良かったのではないか。

また、著者はこの結果に対し、韓国の極端な学歴社会(Lee, 2013)が欲求阻害として働いていると考察、これは欲求の得点が低いことに対する考察でもある。学歴への偏重、極端な競争社会がバックグラウンドにあるため、フィードバックの知覚を指す有能感充足の文脈が歪曲している可能性がある。

自律性・関係性充足が有意な相関を示さなかったのは、競争にとらわれる風土・外的因果に操作される感覚が蔓延り、そもそも低得点であったことが挙げられるという。

→極端な競争環境における有能感充足と動機づけ・調整スタイルとの関係。競争という環境は有能感阻害のファクターとして機能するのか、それとも独立要因なのか。競争というフィードバック提供に関するゆがんだ文脈による供給のため、有能感阻害のファクターとして機能すると仮説。ただしこれは平均化した値を観測したものであり、充足にはかなり差が開くと思われる。実際の成績と絡めて分析した場合、真が現れるかもしれない。

なんにせよ、動機づけが個人のみによって構築されることはないと示唆された。CETですでに示しているはずだが、どうも動機づけ研究は環境的要因を忘れがち、個人主義的な研究になりがちである。

 

 

参考文献

Hong, H.J., Wilkinson, G. & Rocha, C.M. The Relationship Between Basic Needs Satisfaction, Self-determined Motivation, and Burnout in Korean Esports Players. J Gambl Stud 39, 323–338 (2023). https://doi-org.libproxy.ouj.ac.jp/10.1007/s10899-022-10132-8