「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{24}Van Rooij, A.J., Daneels, R., Liu, S. et al. (2017)

子供のゲームプレイ継続・離脱理由を調査したもの。

 

Ladder interview法を採用、これは「なぜそうなったのですか」と一問一答を繰り返すことで潜在的な動機を探る方法である。インタビューは2波にわたって行われた。1回目は普通にインタビューを行った。2回目は対象家庭に体感操作ゲームシステムを導入するという介入を行い、それについても集計した。最終的なサンプルは37名の子供(平均8.3歳)とその親からの情報となった。

 

結果。コーディングして得られた要素は、自己決定理論などゲームの動機づけを説明するときに用いられる主要な理論をかなりカバーしていた。「これは、負けることもあるので楽しい」という、桜井氏がゲーム性と述べるようなリスクとリターンへの言及。「新しいから遊び始めた」とする新規性の動機。自律性や金銭的期待についてはあまり言及されなかったが、これはサンプルが低年齢層によるものと推測。

動機の断絶がプレイを停止させ、動機の継続的な充足がプレイの持続につながるという仮定は、裏付けられた。「1人で遊ぶのはつまらない、姉と遊びたい」とする関係性。「長時間のロード、やめる理由はそれで充分だ」とする技術受容モデルの使いやすさ→有用性のパス途切れ。「GTAでWastedが出たら、もうやめたくなっちゃう」というフローの終了。「ここで辞めたら、すべてがパーになる!」という非達成への恐怖。

また、一般に動機要因としてカウントされない(見逃されてしまう)環境的要因、ゲーム側の強い焚き付けも確認された。「Wi-Fiがつながらないからやめる」「疲れた」などのゲームプレイを阻む物理的要因。時間制限付きコンテンツ・通知などのゲームシステム側の焚き付け、すなわち外発的動機の中でも同一化的に近いもの。

 

ゲームプレイの離脱理由動機で優位だったのは動機づけではなく環境の変化だった(遠藤, 三上, 2020)、次点で有能感の妨害が挙がったが。性差とされるプレイ時間の差も、ここに由来する可能性がある。

あと、ゲーム側がプレイを煽る、つまり外的因果をちらつかせるという状況も示唆されたため、一回ゲームプレイ動機をOIT的にみてみるのはどうだろうか。

 

 

参考文献

Van Rooij, A.J., Daneels, R., Liu, S. et al. Children’s Motives to Start, Continue, and Stop Playing Video Games: Confronting Popular Theories with Real-World Observations. Curr Addict Rep 4, 323–332 (2017). https://doi-org.libproxy.ouj.ac.jp/10.1007/s40429-017-0163-x