「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{15}Gabriela Villalobos-Zúñiga, Mauro Cherubini. (2020)

SDTを分析基盤に置いた行動変容アプリの大量レビュー。

 

App storeで配信されているアプリを対象。使用キーワードは先行研究より抜粋、sustainability・habit・ water drinking・quit smoking・medicine reminders・mental health。除外基準は、一般生産性を目的としたより汎的なもの、サブスク登録が必要なもの、アプリ内課金により機能解放があるもの、英語・フランス語・スペイン語でないもの。結果、208の関連アプリがレビュー対象となった。

以下の手順に従いレビュー。チュートリアルの完遂、要求された場合はアカウント作成、可能な限り提案された行動を実行、アプリ通知に反応。アプリ提案が競合を発生させない時とアプリタスクを実行する動機を感じたときのみ、ターゲットアクションを実行した。

Shiriac et al. (2011)の基準に従い分類。Braun and Clarke (2006)から引用した手順でコード化。SDTの心理的欲求のどれに属すか、またその証明の基準にて分類。

 

結果。3つの心理的欲求それぞれに4項目、計12項目の動機づけにかかわるシステムが抽出された。最も多用された要素は自律性項目のリマインダー機能である。

自律性。通知の詳細を利用者自身が設定できる機能、行動の誘導因となるが、他のタスクとの競合環境にある場合フラストレーションを発生させる。目標設定機能、自身による設定・アプリ側からの提案・過去の記録との競争の3タイプ、因果は常に内側に設けられている。フレーバーテキスト、特定の行動がなぜ善いとされるかの説明機能、動機を具体化することができる。拘束力のある契約、目標未達成時に与えられるペナルティ、自身の制約のために利用される。

有能感。フィードバック、パフォーマンスのスコア化や統計要素など、文脈が肯定的かつ明朗な場合にそう知覚される。経過記録、これまでの活動記録とその変動を可視化したもの、変動の知覚は充足につながる。セルフモニタリング、目標達成や特定のタスク完了を自身で記録すること、知覚と充足を確実に行わせる。報酬、有形報酬や無形報酬など、その獲得が目的とならず結果として受け取れる場合は充足として機能する。

関係性。パフォーマンスの共有、自身の統計やプロフィールの共有、他者に与える影響を考慮するようになる。リーダーボード、他者のプロフィールとの比較、直接的な競争は敗者にとって欲求阻害要素となる。特定目標の共有と競争、最終結果を比較するだけでなく戦略や実行の共有も担う、いわゆるマルチプレイ要素。チャット、テキストメッセージによる他者との交流、過激な発言は控えましょう。

 

行動変容アプリに焦点を当てた研究において、あまり取り上げられない要素を3つ述べている。より高い内発的動機付けに到達することを支援するデザイン、通知の競合や負と認知できるフィードバックへの対応などより細かい修正と適応についての言及、実装するだけでは不十分である。3つの心理的欲求すべてを充足できる要素の探求、有能感と自律性の同居は今まで語られてきた。利用者の特性に合わせたアプリ側からの提案に関する調査、提案するタスクのパーソナライズ化。

 

 

参考文献

Gabriela Villalobos-Zúñiga, Mauro Cherubini. Apps That Motivate: a Taxonomy of App Features Based on Self-Determination Theory. International Journal of Human-Computer Studies, Volume 140, 2020, 102449, ISSN 1071-5819, https://doi.org/10.1016/j.ijhcs.2020.102449.