「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{20}Tsai-Hsuan Tsai, Yung-Sheng Chang, Hsien-Tsung Chang, Yu-Wen Lin. (2021)

SDTとTAMを用いてゲーミフィケーション効力を説明しようとした実験。

 

18-35歳の参加者150名対象、50.6%男性。75名が運動・75名が観戦の役割を担い、2人1組で実験を行う。観戦者は屋内の実験室、運動者は屋外のジョギングできる空間にて実行。タスク終了時に自己申告アンケート。総試験時間は30~60分。

Gatherun systemを採用、ジョギングのゲーミフィケーションを行う。自律性:親しみやすいUIの確保による意思決定の促し、自分に合った設定のレースを選択できる、コース設定自体は自由、レースに参加しない場合は特定人物のレース観戦ができる。関係性:アバターの選択、音声チャット機能による励まし。有能感:リーダーボードの表示、そうは距離等のスコア表示、扱いやすいUIはここにも影響。

質問票。3つの心理的欲求充足、TAM構成要素、知覚された"遊び心"(使ってて楽しいとする主観的感情のことを指していると思われる)。

 

結果。下記図は運動者の結果。なお因子分析ではすべての項目が基準以上の負荷を示した。

関係性の充足は知覚された有能感に正に有意な相関、また態度とも正に有意な相関。関係性と自律性に正の有意な相関。知覚された遊び心は利用態度に弱いが正に有意な相関。知覚された使いやすさは知覚された有能感に正に有意な相関、そして使いやすさは行動に正に有意な相関。利用態度は行動に弱いが正に有意な相関。

以下は観戦者の結果。

自律性は遊び心に正の弱い相関。関係性は知覚された有能感・遊び心、また自律性に正の有意な相関。知覚された有能感は利用態度に正の弱い相関、また行動に正の有意な相関。利用態度は行動に正の相関。

 

両グループともに関係性の充足→知覚された有能感→行動のパスが有意だった。他者への励ましややり取りを受けアプリが有用であることを知覚し、これがアプリの利用を促したと考えられる。また、知覚された使いやすさが態度に直接影響を与えることなく、知覚された有能感の前提条件として機能するというパスが、運動者の結果より示唆された。

また、下記はこの研究の仮説だが、

これを参照する限り、今回は自律性・有能感→知覚された使いやすさ・有能感へのパスが計測されていない。仮説では自律性と有能感が自己効力感に近い概念だと考えられており、自己効力感の経験がプレイ中の楽しさの知覚にかかわっているとする先行研究より仮説を構築したという。

PENSの概念を引用するならば、直観的操作、つまり知覚された使いやすさの向上には優しいUIによる自律性と有能感の充足が求められる、これは論文内でも問われている。また、有能感の充足、自己効力感の知覚はその知覚を促したアプリの有能性を見直すきっかけになると推測「たーのしー! お前、使えるじゃん!」。知覚された遊び心からのパスがほとんど有意ではないところを見る限り、充足による感情表出を介した効力ではなく、有能感からのパスを考えるべきではなかっただろうか。

あと、いつものごとくどの要素が実際に効力をもたらしているかが不明である。

 

 

参考文献

Tsai-Hsuan Tsai, Yung-Sheng Chang, Hsien-Tsung Chang, Yu-Wen Lin. Running on a social exercise platform: Applying self-determination theory to increase motivation to participate in a sporting event. Computers in Human Behavior, Volume 114, 2021, 106523, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2020.106523.