「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{14}Isabel Buil, Sara Catalán, Eva Martínez. (2019)

ビジネスシミュレーションゲームのSDT的効力を調査したもの。

 

スペインの大学学部生2学年n=360対象。このコースではGestionet S. L. が開発したシミュレーションゲーム(https://simuladoresempresariales.com/simuladores/SimGestion.html)が用いられており、今回は2015-2016年と2016-2017年の2学年分を集計、最終ゲームプレイの後に集計された。チュートリアル後にプレイヤーは4~6人のグループを形成、他のグループが運営する架空企業と競争。シミュレーションラウンドでは生産・管理・設備投資・販売域などを決定する必要がある。

自己申告制の尺度、PENS、状況的動機付け尺度SIMS(Guay, Vallerand & Blanchard, 2000)、エンゲージメントはメタ認知戦略質問票(Wolters, 2004)やReeve(2013)、知覚された学習指標(Tiwari, Nafees and Krishnan 2014)。詳細は表1に。項目の因子負荷量はすべて0.6以上、CRは0.7以上、平均分散抽出量AVEは0.5以上であった。

心理的欲求の充足は内発的動機付けの分散の41.5%を占めた。モデル全体はエンゲージメントやその表出の40.2%を占めた。

 

結果。図2を参照。有能感と自律性の充足は内発的動機付けを予測した。内発的動機付けは修練や学習といった行動の表出を直接的に予測、またエンゲージメントを介した予測ともに有意であった。関連性の充足は有意ではなかった。

疑問としては、競争要素がプレイヤーに与えた外発的動機付け的影響、ゲームのどの要素が具体的に心理的充足をもたらしたのか。また成績や一般認知能力が有能感・自律性の知覚に与える影響や表出した行動への影響。

推定だが、プレイ期間としてはおそらく年単位のもの。年単位でプレイしているのなら日々の変動や一定期間ごとの欲求充足と内発動機付けの関係を導き出す縦断的分析もできたと思うが。

被験者の環境描写が少ない、おそらく課題として与えられたものだろうが、外部課題は存在したのか、それとも自由なプレイを認められていたのかがわからない。ただ、CET的解釈で正の結果が出ているということは、少なくとも外部課題や外的圧力は少ないかほぼないとみていいだろう。

しかし自由なプレイが認められているなら、今度はチームでの協力プレイ描写による関係性充足があってもおかしくない。協力と協調の描写どちらもがあったはず。『シミュレーションラウンドではチームによる10回の意思決定が含まれている』なので協調的描写が確認されているが。関係性が有意でないのはOIT基準ではないから?

→関係性の充足が一様であったため(参加者全員が高い関係性充足を知覚していたため)影響しなかったとしている。一様だったため、内発的動機付けの値の変化は有能感と自律性の差により発生したとしている。

 

 

参考文献

Isabel Buil, Sara Catalán, Eva Martínez. Encouraging intrinsic motivation in management training: The use of business simulation games. The International Journal of Management Education, Volume 17, Issue 2, 2019, Pages 162-171, ISSN 1472-8117, https://doi.org/10.1016/j.ijme.2019.02.002.