「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{117}Schoenau-Fog, H. (2011)

プレイヤーのエンゲージメントがなにで構成されているかを探索する調査。

 

エンゲージメントとは特定の事象に関与していたい、影響を与えていたいとする継続的動機の傾向を指す。没入やフローに到達するための前提条件として定義されることもある。このエンゲージメントがなにをきっかけに構築されているかを知るために、まず何を理由にゲームプレイを継続したくなるかを問うた。

n=41(male n=33, 平均23.5歳)対象。ゲームプレイの継続理由に関して自由回答。

結果。プレイヤーエンゲージメントプロセス(PEP)を作成、自由回答の分析からプレイヤーのエンゲージメントがどのように構築・維持されていくかを言語化したものになる。達成したい目的があり、それを理由にゲームに作用し、得られたもの或いは作用そのものに対し感情を経験、目的の維持or放棄を決定する、というもの。先行要因-動機-表出-フィードバックからなるシンプルな動機付けモデルである。

以下、セクションごとの詳細解説。

目的。ゲームが提示する外発的な目標と、プレイヤー自らが打ち立てる内発的目標の2つがある。複数目標の同居も生じ、目的達成が単にプレイ完了に紐づくわけではない。

作用。実行方法或いは実行する際に付き纏う要素を指す。問題解決のための奔走、探索、実験・試行、幅広い創造、豊かな破壊、ストーリーの体験・理解・没入、キャラクターの体験・感情移入、協働と競争からなるマルチプレイ。グラフィック・サウンドを堪能すること、洗練されたUIデザイン。

得られたもの(達成感)。努力に対する報いが充分であること、現在の努力量が可視化されていること(パーセンテージ表示はなおうれしい)、目標達成や区切りがもうけられていることが維持につながる。単なる反復作業で景色に変化が見られない時、離脱を考える。

感情。快楽・充足・好奇心・驚きなどの知覚は継続に繋がり、退屈・不満・単調・容赦のなさなどの知覚は離脱に繋がる。ただし、ネガティブな負荷は短期的な継続効果をもたらす、これは欲求阻害からの回復を目論む言動によるものだと思われる[99][100]。また、目的が確固としている場合、ある程度のネガティブ感情を押し殺すことができる、自律性支援/阻害の関係に近い[63]。

4つのカテゴリとそれぞれの下位尺度の順位付けを3つの調査(計n=310)にて行ったところ、達成感36%、ストーリ体験18%、マルチプレイ10%、グラフィック・サウンド9%、ポジティブ感情8%と続いた。

このことから、ゲームプレイの継続は特に有能感充足にかかっていることが示唆された。自律性と有能感の充足が一貫してゲームプレイの楽しさを予測する研究[105]をはじめとして、高齢者を対象とした研究[114]、PENS[102]、有能感阻害による楽しさの減少[73]、その他理論[45][101]の主張と一致する。

 

 

参考文献

Schoenau-Fog, H. (2011). The Player Engagement Process: An Exploration of Continuation Desire in Digital Games. In Proceedings of DiGRA 2011 Conference: Think Design Play: Fifth international conference of the digital games research association (2011) (Vol. 2011). Digital Games Research Association. http://www.digra.org/dl/db/11307.06025.pdf