「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{139}Wouters, P., van Nimwegen, C., et al. (2013)

シリアスゲーム(学習と指導を目的としたコンピューターゲーム)を用いた指導が真に効果的かを確かめるメタアナリシス。

 

仮説群。

1:シリアスゲームを使った指導は、従来の指導よりも高い学習効果をもたらす。

2:同じく、高いレベルの定着率が得られる。

3:同じく、高い意欲が発生する。

4:シリアスゲーム指導の有益性は受動的な指導よりも有意に大きくなる。

5:シリアスゲームに他の指導方法を混ぜたものは、ゲーム単体よりも効力がある。

6:シリアスゲームでの複数回のトレーニングは、従来指導のそれよりも高い学習効果をもたらす。

7:単独群はグループ群よりも高い学習効果が得られる。

 

方法。対象期間は1990~2012年。選別基準は、シリアスゲームを用いて指導しているもの、実験群と対照群が同一の内容を学んでいること、群平均・標準偏差・t検定・F検定等の値を記述している、障害のない参加者であること。効果量の算出にCohenのdを用いた。38件がレビュー対象となった。合計n=5547。研究のサンプルサイズは16人から1015人まで。

事実に関する知識等の習得を「知識」、問題解決や意思決定等の課題は「認知スキル」とした。遅延テストは介入後1~5週間ほどで行われ、1つの研究は27週間後に行っていた。意欲評価については、動機づけ・興味・関与等の指標が用いられていた。能動的な学習と受動的な学習を区別、また混合的学習を配置。介入が1回のみか、複数回かを区別。

 

結果。1:について、知識と認知スキルの効果量については有意差が見られた。2:について、介入後に行われた遅延テストの成績にてその効力が確認されている。3:について、有意ではない。4:について、ドリル課題よりも問題解決課題のほうが効果が高いとされているが、いずれにしろ有意差はない。5:について、シリアスゲームと他の指導方法との混合が成された場合に学習効果が最も高くなる。6:について、有意差が見られ、長期的な暴露は効果アリとみなせる。7:について、その逆が支持された。

一般に、生物学や工学を除くすべての領域において効果的とされているが、そのばらつきは大きい。ゲーム要素の1つである物語の有無は有意差を生まない、[54]に対する一般的な効力を用いた回答。年齢による差分は曖昧なところが多い。

出版バイアスについては統計的に有意な証拠は得られなかった。

 

基本的に、知識や認知スキル等限定された学習効果は一般にみられるが、動機付けの向上・モチベージョンの向上の項目は今回の範囲では見られず、全体的にあまり有意差が見られなかった。なにかを学習しようと意気込んでゲームプレイする傾向はみられなかったが、ゲームプレイ中に暗黙的にスキルを学習する傾向は見られた報告と一致する[135]。

以下、ゲーミフィケーションの効力についての所感は[108]にて記述。

理論的背景の有無による選抜は、なされていない。

 

 

参考文献

Wouters, P., van Nimwegen, C., van Oostendorp, H., & van der Spek, E. D. (2013). A meta-analysis of the cognitive and motivational effects of serious games. Journal of Educational Psychology, 105(2), 249–265. https://doi.org/10.1037/a0031311