「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{160}Richard M. Ryan, Edward L. Deci. (2019)

SDTの概論、2019年度版。

 

気になったところだけピックアップ。

 

内発的動機付けは現在、神経科学の証拠によって裏付けられている(Reeve & Lee 2018)。内発的動機付けに則って行動したとき、主要なドーパミン作動性経路または報酬系(Di Domenico & Ryan 2017)の活性化と、フィードバックに対するより大きな感度を示す(Swanson & Tricomi 2015)。

声のトーンでさえ、支配的・情報的な環境であることを伝えることができる(Weinstein et al. 2018)。

関連性の話題として、愛着理論または自律性支援が挙がる。

自我関与(Ryan, 1982)、偶発的自己価値(Deci & Ryan, 1995)、自己批判的完璧主義(Soenens, Vansteenkiste, Luyten, Duriez, & Goossens, 2005)。

SDTは欲求阻害を発達課題の不履行・苦痛・精神病理の重要な要素ととらえている(Ryan et al. 2016)。基本的心理的欲求理論の文脈でも説明が試みられている(Vansteenkiste & Ryan 2013)。

基本的心理的欲求理論は心理的欲求という概念がどこまで普遍的かを議論するものである。なので、文化的差異はここで語られる。

因果性志向理論は個々の動機付けのより一般的な傾向を探るもの、より自律的な動機付けを採択する人もいれば、より統制的な動機付けを選ばざるを得ない人もいる。自律性志向のほうが統合的な傾向にある。

Cooper, Lavaysse, and Gard (2015)は統合失調症を持つ人は比較的非人格的志向のことが多いとしている。

Hodgins et al. (2006)は、自律性志向の人はセルフハンディキャッピングが少ないとした。

関係性動機付け理論について、実証研究は少ないようだ。

自我の枯渇とは、自己の意思的行動への能力または意欲が一時的に低下していること(Baumeister, Braslavsky, Muraven, & Tice 1998)。意欲は無限ではなく、また努力型活動は一様に体力を減らすのではない。支配的な環境の場合これが生じやすく、情報的な環境の場合枯渇の可能性は抑えられるとしている。

eudaimonic LivingとSDT(Ryan & Martela 2016)。アリストテレス的な伝統に沿った主張。

 

 

参考文献

Richard M. Ryan, Edward L. Deci. Chapter Four - Brick by Brick: The Origins, Development, and Future of Self-Determination Theory, Editor(s): Andrew J. Elliot, Advances in Motivation Science, Elsevier, Volume 6, 2019, Pages 111-156, ISSN 2215-0919, ISBN 9780128171226, https://doi.org/10.1016/bs.adms.2019.01.001.