「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{1}Sandra Tobon., et al. (2020)

アプリ課金や購買に関するゲーミフィケーション研究の体系的なレビュー。

 

PRISMA法。2010~2018年に発表された論文が対象。検索ボックスに“TS = (GAMIF* AND MARKETING) OR TS = (GAMIF* AND “MOBILE MARKETING”) OR TS = (GAMIF* AND “DIGITAL MARKETING”) OR TS = (GAMIF* AND SMARTPHONE) OR TS = (GAMIF* AND TABLETS) OR TS = (GAMIF* AND ELECTRONIC DEVICES) OR TS = (GAMIF* AND ECOMMERCE) OR TS = (“GAME-BASED MARKETING”) OR TS = (GAMIF* AND ONLINE) OR TS = (GAMIF* AND CONSUMER DECISIONS)”をぶち込む。257件の論文を用いて研究の傾向を探り、そこから精査した36の論文がレビュー対象となった。精査基準は「マーケティングにおけるゲーミフィケーションの消費者の意思決定に与える影響やそのメカニズムについて検討した実証研究を含むもの」。

 

結果。今回は体系的なレビューの方を取り上げる。

36件中29件はゲーミフィケーションによる消費者の意思決定に正の有意な影響を与えているとした、ここで言う意思決定は主にエンゲージメント・製品への態度・購入や利用の意図などである。

ゲーミフィケーションに理論的基盤を添えていた論文は36本中15本であり、自己決定理論SDT・技術受容モデルTAM・計画的行動理論TPBが主に引用されている。{103}を引用する限り、SDTは情動の側面、TAMとTPBは技術的側面を重視したものである。

最も用いられるゲーム要素はポイント・バッジ・リーダーボードであり、これは広範のゲーミフィケーションをレビューした論文{8}、高等教育におけるゲーミフィケーション利用をレビューした論文{93}、ゲーミフィケーションの成熟のレビュー論文{104}と傾向が一致する。

 

レビューの結果見出されたリサーチクエスチョンを列挙する。

1:頻出のゲーミフィケーション以外の他のゲーム要素が消費者の意思決定に与える影響を探る。

2:消費者の心理的特性(性格特性等)によるゲーミフィケーションの知覚の違い、またそれにより生じる効力の違い。

3:ゲーミフィケーションの長期的影響、時間経過による影響力の変動の観察。

4:ゲーミフィケーションの概念や形式がβテストの結果を測るための妥当性のある指標となりうるか。

5:ゲーミフィケーションがその効力を発揮する理論的根拠の提示。

6:ゲーミフィケーションのどの要素が、消費者の意思決定に大きな影響を与えているのか。欲求充足か、達成目標か、社会的環境の提供か、或いはそのすべてか、そうでないのか。

{104}のプレイヤーの個人的特性を変数として導入した調査・実験の推奨に近しい文脈。また、今回投げかけられたことは{8}が提唱したリサーチクエスチョンの2),6)~8)が該当する。

 

参考文献

Sandra Tobon. José L Ruiz-Alba. and Jesús García-Madariaga., Gamification and online consumer decisions: Is the game over?, Decision Support Systems, Volume 128, 2020, 113167, ISSN 0167-9236, https://doi.org/10.1016/j.dss.2019.113167.