「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{158}Annetta, L. A. (2008).

シリアスゲーム・ゲームベースラーニングへの所感。

 

「ゲームってすげー人を意欲的にすんじゃん。せや、これを教育目的に利用すればみんな食いつくんじゃね?」という発想がゲームの教育的利用の根幹にある。この筋で行けば、じゃぁゲームが意欲的になる理由と勉強でそうならない理由を逐一分析していけばいいじゃん、わざわざゲームを経由する必要はないよね、となる。ゲームを使えば何とかなる、みたいな輩を沸かせないためにも経由させない、というものある。

また、ゲームベースラーニングの研究において動機づけ項目の点数が低いことがある[139][140]が、これは従来の授業環境という制約だらけのクソ環境にて運用しているから。証拠に、両研究ともゲームプレイについての縛りが一番緩いグループにおいて動機づけ点数が高い傾向にある。もっと言えば、従来の授業環境はシリアスゲームがその育成を得意とする高次のスキルを育むのにあまり適していないという。外発的動機付けが強い場合、人は浅い学習戦略を採択する傾向にある。

教育用ゲームが効力を発揮するかどうかは、用いる環境によって左右される。基本的に、従来の授業環境とは相性が悪いというのが私の見解だ[108]。

 

もう1つの"マシな"理由として、仮想空間の応用という視点がある。ゲームは現実とは隔絶された空間を視聴覚を頼りに操作し、結果を得る。現実からは隔絶されているため、どれだけ危険な実験で在ろうとも、まず入ることができない場所であっても再現可能になる。またステータスの可視化など現実ではできない視覚補助・聴覚補助が可能なため、難易度調整が易しい。またゲームという特性上、いくらでも複製可能、多くの媒体で再現可能、という"一度作ってしまえば"どうとでもなるものがある。「現実ではできないことができる」のがゲームの強みの1つである。

このマシな理由からゲームを見た場合、それは認知的な観点から従来の教材とは一線を画す超強力な教材であることに気づくだろう[152]。

シリアスゲームやゲームベースラーニングで用いられる教育用ゲームは、一般的に問題解決・批判的思考・論理だてなど高次のスキルを育むのに最適である。ただし、これらのスキルはやや暗黙的に育成される[135]。

 

今回のゲーミフィケーションへの所感は、2つの教育的なゲームを題材に、認知的側面でどのように優れているかを細かく解説していた。The Wolf DenとHI FIVESである。特に、オンラインでの遠隔講座やコミュニケーションなど、場所を選ばずに高強度の学習を提供できる点に着目していた。

そして、教育用ゲームが銀の弾丸でないことにも触れられている。

 

 

参考文献

Annetta, L. A. (2008). Video Games in Education: Why They Should Be Used and How They Are Being Used. Theory Into Practice, 47(3), 229–239. http://www.jstor.org/stable/40071547