「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{145}Leslie M. Miller, Ching-I. Chang, et al. (2011)

STEM教育におけるシリアスゲームの有用性を検証した実験。

 

CSI: THE EXPERIENCE- WEB ADVENTURESを利用。中等教育の学生12州13校735名(中学生385名・高校生350名)対象。人口統計学的測定・コンピュータ経験測定・事前テストを行ったセッション1、3日後に行われたシリアスゲームへの60分の暴露のセッション2、3日後に行われる事後テストであるセッション3からなる。

またサンプルを3群に無作為分配。DNAの処理方法を学ぶ新人として進行するケース1、ケース2・3ではそれぞれ検死とDNA鑑定を用いて推理するパートであり、ケース2は犬、ケース3では焼死体を扱う。

尺度。コンピュータでゲームに費やす時間と操作にて慣れているかどうかでコンピュータ経験を測定。事前事後テストは同一のものを使用。満足度・UIの使いやすさ・ロールプレイ経験と意欲関心を自己申告、この尺度は先行研究からの引用であり、この研究では特段理論的背景が付与されていない

 

結果。全てのコースにおいて、事前より事後のほうが成績が有意に高かった。

UIの扱いやすさの得点において、3例とも有意差が確認された。ロールプレイはケース1とケース2間に有意に見られたが、ケース2とケース3間では見られなかった。

ゲーム経験と事前テストの効力を統制した結果、UIの使いやすさのみが事後テストのおパフォーマンスを有意に予測した。この傾向は3つのケース全てで見られた。

 

恐らくこの研究に理論的背景を付け加えた結論を出すなら「Mayer(2003)のマルチメディア理論に則った認知的な優位性」「PENS[102]が言うところの有能感充足による意欲向上」が挙げられる。

この研究のえらいところはかなり大規模なサンプルでシリアスゲームがSTEM教育において有用であることを示したこと。えらくないとこは『なぜ』有用なのかを示していないこと。これに関しては理論的背景をちょっと添えるだけでいいんだ。尺度を1つ引用してくればいいんだ。なんで研究で彼方が立てば此方が立たずみたいなことやってんだよ。

 

 

参考文献

Leslie M. Miller, Ching-I. Chang, Shu Wang, Margaret E. Beier, Yvonne Klisch. Learning and motivational impacts of a multimedia science game. Computers & Education, Volume 57, Issue 1, 2011, Pages 1425-1433, ISSN 0360-1315, https://doi.org/10.1016/j.compedu.2011.01.016.