「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{138}Ramine Tinati, Markus Luczak-Roesch, et al. (2017)

市民科学ゲームの参加動機・継続動機を調査したもの。

 

人間のニューロンマッピングする市民科学ゲーム「Eyewire」のプレイヤーを対象。このゲームの目的はニューロン解析による研究者への貢献である。ポイント・リーダーボード・競争・統計要素・進捗・チャット・実績報告など主流のゲーミフィケーション要素が用いられている。

86.2%のゲーム進捗と95.6%のチャットが全体の10.9%によって行われている。またゲームのみに参加した大多数のプレイヤー(88%)はゲームとチャットの両方に参加した人と比べると1日当たりの進捗数が有意に少ない。29.5%のチャット非表示コマンドを利用した人は平均して6倍以上ゲームプレイ時間が伸びている。

人口統計学的要素と「なぜあなたはこのゲームをプレイするのか」を自由回答で記述してもらった。505件の回答(男性62%)を得た。半数(男性59.6%、女性53.7%)が一度に1時間以上プレイしていると回答した。

結果。プレイ動機としては「楽しみながら貢献できるから」が13.6%、「楽しく科学と触れ合えるから」が10.4%、「個人的興味があって貢献したいから」が4.6%が上位3つとして挙げられる。1次・2次的動機付けに貢献が添えられることが多い。ストレス発散しながら、楽しくゲームしながら、科学に対する知識を得ながら、あるいは個人的な興味を満たしながら、貢献できることがプレイ動機として挙がる傾向が見られる。

またゲーミフィケーション要素がチャットメンバーに多用されている点を鑑みると、ゲームプレイヤーに対する直接的な貢献や帰属もプレイ動機として有意だと考えられる。

 

このことから、自分なりの目的を達成しながら社会的な貢献に関与できる、OIT的に言うなら統合的動機付けができる余地を構築することが、市民科学ゲームに求められることが示唆された。どういう目的を持っていようが、基本的には私たちはそれを受け入れる。ゲーム内タスクをこなしていれば相応の報酬を提供する。明らかな違反行為はこちらから制するけど、それ以外は自由にやってもらって構わないよ、みんなと協力してガンガンタスクこなしてくれるととてもうれしいな、という姿勢が一番伸びる可能性が高い。

 

 

参考文献

Ramine Tinati, Markus Luczak-Roesch, Elena Simperl, Wendy Hall. An investigation of player motivations in Eyewire, a gamified citizen science project. Computers in Human Behavior, Volume 73, 2017, Pages 527-540, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2016.12.074.