「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{180}Mayer and Fiore 2014

コヒーレンスシグナリング・冗長性・空間的連続性・時間的連続性の原則についてのレビュー。

 

外的過負荷。本質的認知負荷と外的認知負荷が学習者の認知能力を超えた際に生じる、意味のある学習が阻害されている状態。上記5つは、それぞれ過負荷が生じうる場面において負荷低減法として機能する。

1:聴覚・視覚のメモリ領域のどちらかもしくは両方が本質または外的負荷により超過した時。本質からずれるが興味深いコラムの存在、あるいは単純に余計な要素の存在。コヒーレンスはそれらの存在を除外し、シグナリングは注目すべき箇所を区別し、冗長性は聴覚+視覚の重複表現(ナレーションの字幕)などを取り除くようにする。

2:メモリがレイアウトの混乱により過負荷を引き起こしたとき。空間的連続性は視覚的なスキャンの必要性を減らすため、対応する図版と説明文を近くに配置する。

3:メモリが心的描写の保持により過負荷を引き起こしたとき。アニメーションとナレーションにずれがあるなど。時間的連続性は内容で対応するナレーションとアニメーションを同時に提示する。

 

各原理の効力。Cohenのdに従い、d=0.4より教育的効果が望めるとする。0.2で小、0.5で中、0.8で高効果。

本題に直接関係しない魅力的なコラムは、学習初めの時など低負荷な時は学習を促進するが、高負荷な時は学習を促進しない(Park et al 2011)。また、メモリ容量が多い学習者と少ない学習者においても、コラムの効力は異なる(Sanchez and Wiley 2006)。

 

いくつかの研究では、シグナリングの効力が有意ではないことを示唆している。Kris and Hegarty (2007)では実験群がわずかに大将軍よりも好成績を残したが、アイトラッキングではシグナリングの効力が顕著に表れた。

 

冗長なテキストによる妨害効果は低経験者のみに見られ、事前学習等で得た高経験者はその影響を受けなかった(Kalyuga et al. 1999; 2000)。そもそも経験豊富な学習者は過負荷を避けるための内的戦略を持ち合わせているため、過負荷が生じづらいっていうのもある。読み方や学び方が理路整然としているイメージ。基本的には、余計な字幕を付けることないナレーションとアニメーションが効果的。

 

画像と説明文に番号を振って、それぞれを対応させて、画像と説明文を一緒くたにする方法は、意味のある学習を妨げる(Bodemer et al. 2004)。離れていれば眼球の動きも有意に多くなる(Johnson and Mayer 2012)、極力避けたい。事前知識が乏しく、冗長でないテキストや画像を用い、複雑な授業で、対話形式であるときに、効力が最大限発揮されるという。

 

学習者が学ぶ順序を制御できる条件下にある場合(動画のシークバーを想像)、時間的連続性による効果は薄れ、制御できることによる効力が増加する(Michas and Berry 2000)。また、心的描写を保持する能力を超えない範囲で作業や学習内容を提示していった場合、時間的連続性は無視できることが示唆された(Mayer et al 1999)。

 

 

参考文献

Mayer, R. E., & Fiore, L. (2014). Principles for reducing extraneous processing in multimedia learning: Coherence, signaling, redundancy, spatial contiguity, and temporal contiguity principles. In R. E. Mayer (Ed.), The Cambridge handbook of multimedia learning (pp. 279–315). Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/CBO9781139547369.015