{31}Elham Akbari, Albert Pilot, P. Robert-Jan Simons. (2015)
Facebookを用いた英語の通信授業の有用性を実験、自己決定理論の観点から分析したもの。
イランの博士課程の学生40名を対象、一般に英語を話すのはためらわれ、相対難度はたかめらしい。
実験群。Facebookで作成したグループページとSkypeを使い、1日1時間、土日を除く1か月間計20回の授業。授業は生徒間あるいは教員との対話形式、Facebook上で行う。質問を投稿することができ、共有された投稿に対する返信は特に制限されなかった。いちおう、授業ののちに40分間まとめの時間が設けられたらしい。
対照群。伝統的な教室を用い、1日1時間、土日を除く1か月間計20回の授業が行われた。特定の科目について毎日短い段落を書くよう求められた、伝統的な板書スタイル。授業中は教員が全権を握り、議論中は生徒に進行を委ねた。1時間の指導ののち、40分の課題遂行が追加された、この間に生徒間でフィードバックや議論がなされる。
生徒は全員共通の教材を用い、教師も教材に従うよう指示された。
英語成績は標準化TOEFL検定を用いる、120点満点を24で割り5段階評価とした。学生が勉強しているときの能力間の計測。IMI(www.sdt.com)。アンケートは事後記入した。
事前調査より、二群間に成績の差は確認されなかった(M=2.08 SD=0.44; M=2.25 SD=0.55)。
結果。実験群のほうが有意に高い成績を残した(M=3.28 SD=0.30; M=2.45 SD=0.51)。また、3つの心理的欲求充足においても実験群のほうが有意に高かった。
グループ内の相関関係について、実験群の成績と有能感の充足が正の有意な相関を示した。実験・対照の結果を混合させた群においては、3つの心理的欲求充足が成績と正の有意な相関を示した。
動機づけ指標がCET基準なのよなぁ、つまり内発的動機付けという側面でのみ計測している。実験群と対照群がどのような動機づけを獲得したかをOIT的に見れたらもうちょっと考察しがいがあった。また、グループ間での差分は大いに見られたが、グループ内での差はほとんど見られなかった。
限られたサンプルと教科範囲・文化的差異・教員間の能力・やや短期的な暴露などの限界はあるが、これは少なくとも言語学習においては通信授業のほうが優位であることの示唆だ。
おそらくFacebookの対話形式、相互作用的なやり取りが効いたのだろう。回帰分析において一番の負荷を示したのが関係性の充足とあった。SNSを用いた言語学習は、例えばお試し英会話がチャットで挑める。チャットとして記録されるから、フィードバックもしやすい。場所の依存もない、どこでもできて、誰かが応えてくれる。授業形態もそれを意識した構成だった。
会話は言語を学ぶ上で、現実的かつ実用的かつ身近な学習課題がかなりのスパンでポップする。「どういった語彙で表現すればいいのだろう?」と。そこと今回のFacebookがかみ合ったのだろう。
参考文献
Elham Akbari, Albert Pilot, P. Robert-Jan Simons. Autonomy, competence, and relatedness in foreign language learning through Facebook. Computers in Human Behavior, Volume 48, 2015, Pages 126-134, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2015.01.036.