「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{133}星野 佑輔, 高島 健太郎, 西本 一志. (2019)

つまらないタスクの前にビデオゲームを遊ぶことで自己効力感が高まり、つまらないタスクへのやる気が向上するのかを確かめた実験。

 

"誰でも神プレイできるジャンプアクションゲーム"を採用。質問票は恐らく独自のもの。事前・事後の質問票は実質的に同等の内容となっている、無意味質問と反転質問を混ぜて一見わからなくしている。手順は実験の説明→つまらないタスクの練習→質問→介入→質問→インタビュー。後続タスクへのやる気が向上するかを確かめるが、後続タスクを実際にやるとは言っていない。

実験1(n=14)では難易度別のゲームを介入で提供、正の補正がかかる低難度、負の補正がかかる高難度、補正なしの普通難度の3条件に振り分け。実験2(n=12)では普通難度のゲームをやるか休憩するかを介入で提供。介入時間はどちらも5分。

 

結果。実験1では普通難度の条件群が意欲向上の傾向を強く示した、時点で低難度。実験2では、ゲーム群と休憩群に有意な差はなく、構造化インタビューによりむしろゲームへの暴露により意欲が下がったことが示唆された。

以上より、ゲーム難易度を人為的に操作すること(=直観的操作[102]の理念に反するような入力反映への補正)はあまり好ましくないこと、過剰に面白いゲームは後続のつまらないタスクへのやる気を阻害する可能性があること、が示唆された。

実験1は難易度調整に関するCET的な知見が得られた。実験2は自明、欲求充足がより見込めそうなほうに没頭するだろうさ。ただしこれは短期的な効力、ゲームにより培われた自己効力感が長期的にどう動機に影響を与えるかは不明。因果性志向理論から見たゲームの効力、計測に多大な労力が必要だが、価値はある。

この実験には動機付け理論によるバックグラウンドがない、注意せよ。

 

 

参考文献

星野, 佑輔 and 高島, 健太郎 and 西本, 一志    気乗りしない課題へのやる気を喚起する行為としてのビデオゲーム利用の検討.情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング 2188-8914 情報処理学会 2019-02-15 2019-EC-51    13 1-8 https://cir.nii.ac.jp/crid/1050003824792112896