「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{132}遠藤 雅伸, 三上 浩司, (2020)

継続したゲームプレイからの離脱要因を調査したもの。

 

離脱したゲームタイトルとその離脱理由を自由回答、離脱理由文を解析し頻出ワードをタグ付け、有効回答数1553件。抽出した64要素を記載した質問票を作成、その理由により離脱経験があるものにチェックを入れることを要求、有効回答数2417件。2つともオンライン調査、性別や年齢の集計も行った。

結果。全体的な離脱傾向として、なんらかの理由でプレイできない期間が発生しプレイ方法等を忘却してしまったことによる『ブランク』、生活環境が変化したことによりプレイに時間が避けなくなった『生活変化』、単調作業を反復して行うことに耐えられなくなった『単純作業』が上位3位に挙げられる。

性差。男性は『実力差』『絶対有利』『違和感』など自分が勝利できない環境に身を置くのが耐えられないとする傾向が強く、『自己目標』など自分なりに納得する結果を得られて離脱するというのも多く見られた。女性は『高難易度』『強敵』を理由に離脱するなど確実に成功体験を得たいとする傾向にあり、『生活変化』『燃え尽き』『多目的』などプレイ継続に対する執着が薄い傾向が見られた。

加齢。『身体限界』『疲労』など身体能力の衰え、『新ゲーム』『違世界観』など既存のゲームシステムに対する慣れ、『高難易度』などプレイスキルの低下、これらが加齢により離脱理由として挙がりやすくなった。また『課金必須』は若年に有意な離脱理由である。『ガチ勢』『繰り返し』『説明不足』による離脱は加齢に伴い減少した。

 

全体的に、プレイ中断からの再開、生活環境の変化など不可抗力的な離脱、作業が多い設計、事前情報と実際のゲーム内容の乖離、不適切な難易度が離脱理由として優位だった。ゲーム外環境の変動による離脱は制御できないものが多い。難易度は性差・加齢・個人差の影響を大きく受ける、フロー理論[80]に従えば、一般に成功可能より少し上に設定できるのが好ましい。課金に関連する要素は別途考察[112]。

プレイヤーに作業を強いるような設計、または作業が負担にならない設計は最優先で考慮すべきだろう。プレイヤーに過剰な努力を必要とするプレイスタイルも見直すべき。

ゲーム外環境による要因を除けば、Yee(2006)における達成動機、つまりSDTの有能感充足に係る項目がプレイ離脱を大きく左右することが示唆された。『面白くない』や『限界』などがこれに該当する。ゲームプレイによる有能感充足を示した研究[105]、高齢者のゲームプレイ理由を問うた研究[114]、有能感阻害が短期的なプレイ動機の強化につながるとした研究[99][100]、ゲームプレイの継続理由について問うた研究[117]など、有能感充足がゲームプレイにおいて重要である[101]とした主張と一致する。

 

 

 

参考文献

遠藤 雅伸, 三上 浩司, 継続したゲームプレイからの離脱理由に関する調査分析, デジタルゲーム学研究, 2020, 13 巻, 2 号, p. 13-22, 公開日 2021/07/01, Online ISSN 2434-4052, Print ISSN 1882-0913, https://doi.org/10.9762/digraj.13.2_13, https://www.jstage.jst.go.jp/article/digraj/13/2/13_13/_article/-char/ja,