「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{125}岡田 涼, (2007)

CET観点からの内発的動機付けのまとめと、教員の自律性支援と生徒の動機付けスタイルの交互作用について調査したもの。

 

内発的動機付けに関する初期の研究は、これを促進-抑制する要因の探求にあった

有名なのは報酬の効力、Deci (1971)をきっかけに議論が起こり、Deci et al. (1999)を一端の収束とした。基本的には外的因果の知覚としての報酬は内発的動機付けを抑制する、これは成績に随伴する報酬など「報酬のために頑張る」という知覚ができる提供などを指す。

言語的報酬は内発的動機付けを促進する傾向にあったが、努力の賞賛は促進効果をもたらさない(Koestner et al. 1987)などの条件が示唆されている。また、同じ言語的暴露であっても、「すべき」などの圧的表現は内発的動機付けを抑制する。

内発的動機付けは他者基準による評価の状況においても抑制する。また相対評価絶対評価に比べない内的動機付けが低下するという報告もある。

課題への従事期限も内発的動機付けを抑制させる。明確に期限を提示する条件でも、暗に期限を提示した条件でも、同様に低下の傾向が見られた。

三者による監視も内発的動機付けを抑制させる。ただし、単なる好奇心や偶然による監視は動機付けを左右せず、評価を前提とした監視、目的はあるが明かされない監視などがこれに当たるとした。

基本的に、選択の機会の提供は内発的動機付けを促進する。ここで重要なのは選択しそのものではなく選択の権限が対象にあると知覚されること。なので、「もちろんあなたはこれを選択しますよね?」などの選択の強制はむしろ内発的動機付けを抑制することが示唆されている[63]。

その他、競争・課題と無関係なディストラクション・知能評価の提示・他者に教える役割の予期、などの効果が探られている。

これらの研究が、CETと自律性支援という概念の構築にかかわってくる。

 

授業への興味と効力感に対して、教員の自律性支援と生徒の動機付けスタイルの交互作用的効果が見られるかを調査する。

2007年2月実施。中学生114名(男子55名)対象。清水ほか(1996)の学習動機付け尺度、生徒が最も大事だと思う教科の選択、選択した教科の授業に対する教師の自律支援的行動の知覚、選択した教科に対する興味、選択した教科に対する不安、学習に対する効力感を、尋ねた。

結果。学習動機付け尺度の得点を元にクラスタ分析、同一化的調整と内発的動機付けが高い「自律スタイル」、すべての動機付けが高い「高動機付けスタイル」、外的調整が高い「統制スタイル」が抽出された。授業に対する興味について、自律支援の知覚低群は自律>高動機>統制の順に、知覚高群は高動機>自律>統制の順に高かった。授業に対する不安について、低群は高動機>統制>自律の順に、高群は高動機>自律≒統制の順に高かった。学習に対する効力感について、低群は自律>高動機>統制の順に、高群は高動機>自律>統制の順に高かった。

授業に対する興味と学習に対する効力感において、教員の自律支援と生徒の動機付けスタイルの交互作用が見られた。具体的には、自律支援の知覚が高水準の時、高動機付けスタイルは2つのスコアにおいて自律スタイルを上回ることが確認された。自律性支援の効力は生徒が抱く動機付けによっても左右されることが示唆された。[77]と一致する結果である。

 

 

参考文献

岡田 涼, 内発的動機づけ研究の理論的統合と教師―生徒間の交互作用的視点, 名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要, 心理発達科学, 2434-1258, 名古屋大学大学院教育発達科学研究科, 2007-12-28, 54, 49-60, https://cir.nii.ac.jp/crid/1390009224509489024,10.18999/nupsych.54.49