「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{126}Reeve, J., & Jang, H. (2006)

巷で言われる自律性支援/支配的スタイルの指導が真に生徒の自律性知覚に影響を与えているかを実験、またその特徴を列挙したもの。

 

米国中西部の大学の教員資格プログラム在籍の同性教員72組(女性62組)対象。片方が生徒役、片方が教員役を務め、パズル課題の指導を10分間行う。教員役の振る舞いは自由とした。授業の様子はビデオ録画された。自己決定の度合いに関する尺度PSD、興味の度合いを生徒の自己申告。エンゲージメント・教員の指導傾向・生徒が自力で解けたパズルの数はビデオを元に2名の評価者が評価。

結果。生徒役の自律性の認知は興味・エンゲージメント・解けたパズルの数すべてに有意かつ正の相関があった。8項目の自律性支援の指導項目は生徒役の自律性の認知に正の有意な相関。6項目の支配的な指導項目は生徒役の自律性の認知に負の有意な相関。

 

自律性支援スタイルの指導の特徴

・能動的,反射的,偶発的問わず生徒の意思表示に対応すること、またその頻度が高いこと。

・生徒に、自身の力で問題解決するよう促すあるいは許可する傾向。「これやってみてもいいですか?」という問いに合理的かつ寛容な判断を下す。

・生徒に話の主導権を提供することがある。

・生徒の上達や習得に対する肯定的フィードバックの高頻度な提供。

・生徒の努力と関与を継続させるような発言。「頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって(rya」

・生徒が行き詰っている時にどうすればいいかを提案する。「こうすればもっと楽にこなせるようになるはず」

・生徒の発言に対して「良い質問ですね!」というポジティブな返答をする頻度。

・生徒への共感を示す発言。「あぁここ難しいよね、わかる私もここで躓いたもん」

 

支配的スタイルの指導の特徴

・生徒が解くべき問題に直接介入する。「よこせ、後は俺がやる」

・生徒が解くべき問題の答えを直接提示する。

・生徒が発見すべき問題の構造を言う。

・「これをするべき」「これをしてほしい」「これをしなくてはならない」と生徒に行為を強制する文言の多用。

・「指示通りに動いてくれる?」「なぜ先に進まないんだ」等の質問に見せかけた圧の投げかけを行う。

 

基本的にはCETの自律性欲求の充足に従う。2つのスタイルを大別するなら生徒の意思決定・行動・言動を重視するかそうでないかの違いとなる。前者は『生徒』を重視するため、生徒が今なにを思っているのかに焦点を当て、生徒が自身の因果化に置いておきたい領域に踏み入らないよう注意を払っている。生徒が最優先なため、生徒の意思決定に細かく反応することができる[81]。後者は例えば成果に重視していることから、外的成果の獲得に躍起になる側面が見え、生徒の領域にずかずかと入り込める。成果が最優先なことが多いため、生徒がどうあるのかに焦点が当たりづらい。

ただし、成果の面から見ても自律性支援のほうが優れていることは他の研究でも証明されている。内面化に実質的に影響するのは自律性支援の知覚の程度であること[122]、医療機関において自律性支援が心理的欲求充足を介し自律的な動機付けを構築しより深い思案をもたらしていること[72]、教員による日常的な自律支援は生徒の自律的動機付けと関与を強化していること[63]などがその証拠として挙げられる。

 

 

参考文献

Reeve, J., & Jang, H. (2006). What teachers say and do to support students' autonomy during a learning activity. Journal of Educational Psychology, 98(1), 209–218. https://doi.org/10.1037/0022-0663.98.1.209