{112}Juho Hamari, et al. (2017)
ソーシャルゲーム(Free-to-play game)の有料コンテンツの購買理由について調査したもの。
オンライン調査。n=519、94%が40歳以下、大半が20代。特定のゲーム媒体ではなく、とりあえず無料ゲームに課金したことがある人をサンプルとして扱い、その動機と課金額について質問した。
結果、いくつかの因子が顕在した。
第一因子。妨害や突っかかりなしにスムーズにプレイできることに関する動機。反復作業の回避や待ち時間の省略など。
第二因子。社会的提示と相互作用に関する動機。期間限定イベントへの参加、贈与、マルチプレイなど。
第三因子。競争に関連する動機。上位層に食い込むこと、成果をアピールすることなど。
第四因子。経済的な購入の根拠に関する動機。合理的な価格設定、ゲームへの支援、趣味への投資など。
また、コンテンツのアンロックとゲームへの支援は因子に等しく負荷を与えたが、前者は第一と第二に、後者は第四因子に収束した。動機付けスタイル[77]のように、課金に対する動機は一様ではないことが示唆された。
課金傾向については、第一、第二、第四因子が正の相関を示した。特に第四因子が強力であり、第三因子は有意な関係を示さなかった。
今回の文脈ではPay-to-Winの傾向は支持されなかった。論文ではPay-to-Winの傾向が現れなかったことに対し、公平性の汚されによる感傷的反発が購入動機を低下させる可能性があるとしている。
Pay-to-Winはゲーム外要因によるゲームの優劣を決定づける行為であり、超強力な外的因果として機能する。特に競争が激しいゲームは「勝利条件が同様に確からしい」「勝利がプレイヤーに大きく左右される」ことで心理的欲求を担保しており、これを崩すゲーム仕様はマイノリティであるライト層を突き放す要因になる。
先行研究によって、ゲームは継続したいがゲームプレイに不快感を抱いているプレイヤーが、有料コンテンツの購買意欲が高いことが示されている。開発側はプレイヤーを維持するのに十分な楽しさと、プレイヤーが購入するのに十分な不便さを同時にて提供する必要がある。
因子分析を鑑みた場合「そのゲーム自体をかなり好いており、ゆえに継続的にプレイしたいので付き纏う不快感を解消するべく、妥当な価格の有料コンテンツを購入する」という道筋が見えてくる。ゲームに対する支援が購買意欲にかなりの負荷量を見せており、課金しなければいけない不快感よりも、課金したくなる優良コンテンツのほうが結果的に稼げることが示唆された。
参考文献
Juho Hamari, Kati Alha, Simo Järvelä, J. Matias Kivikangas, Jonna Koivisto, Janne Paavilainen. Why do players buy in-game content? An empirical study on concrete purchase motivations. Computers in Human Behavior, Volume 68, 2017, Pages 538-546, ISSN 0747-5632, https://doi.org/10.1016/j.chb.2016.11.045.