{111}Vero Vanden Abeele, et al. (2020)
ゲームユーザーを対象とした研究(GUR)のための新しい指標、Player Experience Inventory (PXI)の開発を行った研究。
プレイヤーのフィードバックを定量化するための尺度には、主に心理的側面と行動的側面の2つがある。前者は心理的欲求の充足を測ることでプレイヤーの満足度を知ろうとし、PENS[102]がこれに当たる。後者はプレイヤーの選択の結果がプレイヤーの満足度として表出していると仮定し、これを測っている。着目点が違うため、精度に差が生じているし、一部では「まだ精度が足りない」と評価されている。
PXIはMeans-End理論を主軸に、PENSを主な参照元として尺度構成を行っている。Means-End理論は行動的側面の理論体系であり、ユーザーの嗜好を理解するために結果(行動)に焦点を当てることを提唱している。
研究1, 2で専門家計64名による尺度の選別が行われ、研究3, 4, 5, 6, にて合計n=529を用いて尺度の妥当性を計り、研究7で尺度の基準妥当性を評価した。
尺度項目を列挙する。なおリッカート尺度7段階。
・意味
このゲームのプレイは自分にとって有意義なものだった。
→このゲームは自分に関係があるものと感じた。
→このゲームのプレイは自分にとって価値があるものと感じた。
・熟達
このゲームをプレイしている時、プレイできるだけの能力があると感じた。
→このゲームのプレイは得意だと感じた。
→このゲームをプレイしている時、上達を感じた。
・没入
このゲームをプレイしている時、周囲が気にならなくなった。
→ゲームに没頭していた。
→ゲームに完全に集中していた。
・自律性
プレイしている時、このゲームの自由度は高いと感じた。
→自分なりのプレイが試せた。
→このゲームの攻略について、複数の選択肢があるように感じた。
・好奇心
このゲームの続きを知りたいと感じた。
→このゲームがどう発展していくのかが気になった。
→ゲームのストーリー等の進展が気になった。
・直観的操作
このゲームは操作しやすいと感じた。
→ゲームを操作するためのアクションが明確だった。
→何をすればいいのかがわかりやすかった。
・やりがい
このゲームはやりごたえがあったが、難しすぎなかった。
→ゲームは簡単すぎず、また難しすぎることもなかった。
→ゲームは私にとって適切な難易度だった。
・フィードバック
目標に対する進捗が明確に表示されていた。
→ゲーム内で自分のパフォーマンスを容易に評価できた。
→ゲームの進捗状況を知らせてくれた。
・グラフィック&サウンド
ゲームの世界観がよかった。
→ゲームのグラフィックとサウンドがよかった。
→ゲームの世界観を評価したい。
・目標とルール
ゲームの目標は明確だった。
→ゲームの全体的な目標を把握できた。
→ゲームの目指すところが理解できた。
参考文献
Vero Vanden Abeele, Katta Spiel, Lennart Nacke, Daniel Johnson, Kathrin Gerling. Development and validation of the player experience inventory: A scale to measure player experiences at the level of functional and psychosocial consequences. International Journal of Human-Computer Studies, Volume 135, 2020, 102370, ISSN 1071-5819, https://doi.org/10.1016/j.ijhcs.2019.102370.