「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{101}Klimmt, C., & Hartmann, T. (2006)

ゲームプレイの動機獲得のために有能感と自己効力感がいかに大事かを説く理論的考察。

 

ゲームは他のメディアコンテンツと比べてかなりコストがかかる娯楽である。意思決定の機会は比にならないし、プレイ環境を整えるのも一苦労である。また操作の記憶や世界観の理解も必要だ。そしてこの動作は基本的に目的的、つまり自分自身でプレイ目的を作る必要がある。このコスト激重な娯楽を十全に楽しむために、ゲーム側は有能感充足と自己効力感の提供を強化してきた

有能感の項目は特にフィードバックの特性に焦点を当てた。明朗快活な正のフィードバックの提供が、プレイヤーに有能感の充足をもたらす。またゲーム内の派手な結果が直観的な操作により引き起こされるのも重視されるべき事柄だ。現実ではあまりにも時間がかかりすぎる発破は、ゲームではボタン1つで実施できる。「気軽にいろいろ試せる」状況の提供もゲームが成せることだ。そしてプレイヤーの操作は一方向的ではない、プレイヤーの操作により世界が変動し、世界が変動したことでプレイヤーの行動に影響を与えるという相互作用がそこにある。

ゲーム体験を通じて自己効力感の醸成、「やれば、できる」感の醸成も必要となる。ゲームプレイはあくまで目的的。期待価値理論でいうところの期待を担っている。ゲームは他のメディアとは比にならない稼働の量が求められる、そんなゲームプレイの維持には、その稼働が自分で制御できる範疇にあると思い込ませる必要がある。課題難度の設定や段階的な成長要素、有能感充足の機会、或いは辞めたいと思った時に辞められる権利。ゲームをよくプレイする人はゲームに対する自己効力感がかなり高く、怖気づかない、ゆえにゲームをよくプレイする人で在れる。

 

ゲームという娯楽が選択される理由の大きなところに、現実ではできない体験、或いはゲーム特有の体験ができるというところにある。体験による楽しさを底で支えているのが、「やれば、できる」ことを伝える自己効力感、出来た結果をプレイヤーに魅せる有能感、2つの言葉で表現できる要素である。

なお自律性は有能感と相互作用の関係にある。フィードバックを元に意思決定し、意思決定の結果をフィードバックされることを望む。ゲームにおける動機付けは基本的に内発的動機付けであり[75]、自己決定理論[76]のCETが主軸となる。

 

 

参考文献

Klimmt, C., & Hartmann, T. (2006). Effectance, Self-Efficacy, and the Motivation to Play Video Games. In P. Vorderer & J. Bryant (Eds.), Playing video games: Motives, responses, and consequences (pp. 133–145). Lawrence Erlbaum Associates Publishers.