「ゲーム心理学」知見保管庫

「ゲーム心理学」の参考文献等を投稿します。

{114}De Schutter, Bob and Malliet, Steven. (2014)

高齢者のゲームプレイの動機とそのタイプを探索する研究。

 

テトリスソリティアウォークラフトハーフライフのいずれであっても、少なくとも週一回または年一回ゲームプレイしたことがある、45歳以上」を条件にサンプリング。オンラインコミュニティ、新聞、電話、雪だるま式手法を用いた。結果収集された240名の回答者よりサンプリング、35名が本研究に残った。面接法、平均時間は2時間。

結果。まず、代替欲求を動機としてプレイする人は少数派であることが確認された。

知覚された欲求について。知識やスキルを身に着けたいとする認知的欲求、揺さぶられたり楽しい経験を味わいたいとする感情的欲求、自律性や意思表出のための個人的欲求、周囲の人や外の世界とつながりたいとする社会的欲求、現実から逃れたり代替的にプレイしている逃避の5つが抽出された。

プレイ動機について。Yee (2006)の報告にあった達成・没入・社会の3つが抽出された。ただし、社会的動機を達成・没入の副次的なものとして扱っている。

心理的欲求の充足について。有能感の充足を主張する傾向にあった。

 

欲求と動機の2次元軸に基づいて、高齢者プレイヤーは5つのタイプに分類された。

暇つぶし(Time wasters):暇つぶしとしてのゲームプレイ。認知能力の衰えを防ぐためと理由はつけているが、その実ゲームプレイをあまり重視していない。いわゆるカジュアルプレイヤー。

自由戦士(Freedom fighters):ゲーム以外にすることがないので、ゲームにまぁまぁ没頭している人たち。自律性を主な動機とし、短期的な喜びを求めた。自分の望むことができる、というのが主な主張。

代償者(Compensators):逃避動機を主とするプレイヤー。孤独感を紛らわすため、退屈から逃れるために快楽と有能感を求めている。様々なゲーム嗜好を示し、またゲームプレイをかなり重視している。

価値探究者(Value seekers):内発的な動機付けに基づいてプレイする人たち。典型的なのは、自分がもとから興味を持っていたものの延長線上として扱うパターン。ゲームプレイを非常に重要なものと位置づけていた。

愛好家(Ludophiles):ゲームプレイによる楽しさを動機としたプレイヤー。ゲームそのものに焦点を当てているため、ゲームプレイを重要視していた。

 

年齢層を絞らない先行研究と類似のタイプが見出されている{55}。また逃避動機を選択するものが少数派である傾向も一致する{57}。

今回見出されたタイプと、従来の指標を組みわせた分析。またOIT等による分類。

今回の分析の限り、社会的動機を主な理由としたタイプは作られなかった。社会的動機を副産物として定義したためだろう。

 

今気づいたけど、愛好家のような傾向って{57}だとどう言語化されるのかしら。愛好家はゲームプレイによる純粋な楽しみを目的とすると表現されていて、第四因子のスキル上達を目的としていないし、第三因子の没入を目的としているかと言われれば危うい。{55}のタイプ分類に基づけば、恐らくタイプEに分類されると思われるが。

これをゲームタイプ分類の不十分さとして指摘すればいいか、内発的動機付けに内包される動機要因の未言語化を指摘すればいいのかが分からない。楽しいからやるも、内発された目的の達成も、ぜんぶ内発的動機付けだもの。なお今回の内発的動機付けは目的的行動としての内発的動機づけである。

 

 

参考文献

De Schutter, Bob and Malliet, Steven. "The older player of digital games: A classification based on perceived need satisfaction" Communications, vol. 39, no. 1, 2014, pp. 67-87. https://doi.org/10.1515/commun-2014-0005